低用量ピルによる血栓症の危険性について徹底解説

監修者:産婦人科医 原野尚美 


最終更新日

低用量ピルによる血栓症の危険性について徹底解説

「ピルを飲んでいると血栓症になる」と聞いたことはありますか?「長く飲んでいても大丈夫なのかな」と不安になってしまったかもしれません。

ピルの副作用の中で、血栓症は重篤なものの1つです。今回は、低用量ピルと血栓症の関係や、血栓症の症状、対処法についてご紹介します。

目次

  • 1.低用量ピルと血栓症について
  • 2.血栓症にまつわるQ&A
  • 3.まとめ

低用量ピルと血栓症について

血栓症は、低用量ピルの副作用の1つです。なぜ血栓症が起きるのでしょうか?メカニズムや症状についてご紹介します。

低用量ピルの副作用

低用量ピルは、避妊や生理周期の安定化、生理痛の緩和など、さまざまな効果が得られ、女性の生活を豊かにする選択肢として広まってきました。
とはいえ、薬ですから副作用が出ることは避けられません。ご存じの方も多いかもしれませんが、代表的なものをいくつか確認してみましょう。

<頻度は少し高いが、危険性は低い副作用>

吐き気、むくみ、体重増加、胸の張り、不正出血、頭痛

<頻度は低いが、危険性の高い副作用>

血栓症

血栓症とは?

血栓症とは、何らかの原因で血の塊ができ、それが血管を詰まらせた状態です。長い時間にわたって同じ姿勢でいると、「エコノミー症候群」になると聞いたことはありませんか?エコノミー症候群も、血栓症のことです。
肺の血管に詰まれば「肺塞栓症」、脳の血管に詰まると「脳梗塞」と呼ばれ、詰まる部位によって名称や症状は異なります。いずれの場合でも、早い対処が必要なことに変わりはありません。

低用量ピルを服用すると、服用していない方と比べれば血栓症のリスクが約3〜5倍となります。かなりリスクが高まったようにも感じられますが、それでも発症割合は1万人中3〜9人で、頻度としてはごくわずかです。
低用量ピル服用中よりも、妊娠中〜出産直後の方が血栓症を起こす確率が高いとわかっています。低用量ピルの影響で血栓症を起こすことがあるのは事実ですが、怖がりすぎる必要はないでしょう。

<1万人当たりに血栓症を起こす人数>

低用量ピルを服用していない人 1〜5人
低用量ピルを服用中の人 3〜9人
妊娠中の人 5〜20人
出産後12週間以内の人 40〜65人

低用量ピルに含まれる「エストロゲン(卵胞ホルモン)」が血栓症を引き起こす一因です。エストロゲンは肝臓に取り込まれると、血液を固めるための「凝固因子」の合成を促す作用があります。そのため、低用量ピルを服用してエストロゲンの濃度が高い状態となると、血液が固まりやすい状態になるのです。

血栓症のリスクが高いのは?

血栓症は、頻度は低いですが、発症すると危険な副作用です。血栓症を発症しやすい要因としていくつかわかっているものがあります。こうした要因をふまえ、低用量ピルを服用してよいかどうかを医師が判断します。

  • 喫煙者
  • 肥満
  • 血栓症を起こしたことがある方
  • 高血圧の方
  • 糖尿病の方
  • 年齢(40歳以上)
  • 手術、病気などで長期間寝たきりになる
  • 関節リウマチ、潰瘍性大腸炎など、体で炎症が起きている方

※高血圧、片頭痛は脳梗塞のリスクを高めます。

※高血圧、喫煙は心筋梗塞のリスクを高めます。

ここで挙げた以外にも、血栓症のリスクが高く低用量ピルを服用できないと医師が判断する場合はあります。血栓症の発症をできるだけ抑えるためには、診察時に持病や服用中の薬についてきちんと伝えることが大切です。
必要に応じて、血栓のリスクを評価する・血栓の有無を確かめるために血液検査をおこなうことがありますが、血栓症の予測や予防にはなりません。

また、「低用量ピルを1か月以上休薬して、再開したとき」に血栓症のリスクが高まることは知っておいてください。低用量ピルを開始したときは、服用したりやめたりを繰り返さずに、継続して服用する方が安全です。

血栓症を疑う症状

血栓症の症状として、頭文字をとった「ACHES」というものがよく使われています。低用量ピルを服用中に以下のような症状が出た場合は、血栓症の可能性がありますので、すぐに受診が必要です。

A(Abdominal pain)強い腹痛
C(Chest pain)強い胸痛、息苦しさ(背中の痛みと感じることもある)
H(headache)強い頭痛
E(Eye/Speech problems)見えにくい部分がある、視野が狭くなる、呂律が回らない、失神、けいれんなど
S(Severe leg pain)ふくらはぎの痛み、むくみ、しびれ、皮膚の赤み

血栓症の兆候

血栓症かもと思ったら何科へ?

低用量ピルを服用中の方で、先ほど紹介したような症状が出た場合には、できるだけ早く医療機関へかかりましょう。血液検査や、エコー検査などが必要です。血栓症の可能性を早く考えるために、「低用量ピルを服用中」という情報は必ず伝えてください。若い方では、「低用量ピルを服用中」という情報がなければ、血栓症の可能性を考えるまでに時間がかかる可能性があるためです。

<医療機関が開いている時間帯>

平日の日中など、医療機関が開いている時間帯であれば、以下の病院へかかりましょう。

  1. 低用量ピルをもらっている婦人科へ相談し、指示を受ける
  2. オンラインで処方されている場合は、処方元へ相談し指示を受ける
  3. 循環器内科や内科を標榜する医療機関に、「症状」と「低用量ピルを服用中」ということを伝え、受診してよいか確認する

<医療機関が開いていない時間帯>

夜間や休日など、医療機関が開いていないときは、近くの救急病院や当番病院へ「症状」と「低用量ピルを服用していること」を必ず伝えて受診の相談をするか、「#7119」へ電話して対応できる医療機関を尋ねましょう。

※「#7119」は、救急安心センター事業といって、受診すべきかどうかや、近隣でかかることのできる医療機関について助言をもらえるサービスです。電話をかけると、医師や看護師など、トレーニングを受けた専門家に繋がります。

血栓症にまつわるQ&A

血栓症について、よくあるご質問にお答えします。

血栓症リスクが高い人も服用できるピルはある?

「血栓症のリスクが高くて、低用量ピルを服用できないと言われた。でも、生理痛がつらい…」そんな方もおこなえる生理痛の治療があります。

もしかすると、リスクの高い持病などを隠して低用量ピルをもらっている方もいるかもしれませんね。ですが、万が一にも血栓症で後遺症が残ってしまっては大変です。
エストロゲンが含まれていない「プロゲスチン製剤(ジエノゲストなど)」という内服薬や、子宮内に装着する「IUD(ミレーナなど)」であれば、月経困難症や子宮内膜症に保険適応があり、血栓症のリスクがある方にも安全に使用できます。避妊には使用できませんが、生理痛や出血量の多さで悩んでいる方は、婦人科で相談してみてはいかがでしょうか。

ピルを長く続けるほど血栓症が起こりやすくなるのですか?

低用量ピルを服用中、血栓症を最も起こしやすい時期は、「服用を始めてから3か月目まで」です。それ以降は、長く続ければ血栓症のリスクは低くなっていきます。
短期間のうちに、低用量ピルを服用したり、中断したりと繰り返すのは避けましょう。

血栓症の予防のためにできることはありますか?

血栓症は、定期的に検査をしたとしても、完全に予防することはできません。
低用量ピルの処方を受ける際には、持病や服用中の薬・サプリメントを正しく申告することが大切です。リスクが高いことを主治医が理解していれば、こまめなフォローアップをおこなうなど、注意することができます。

また、手術などの医療処置を受ける際には、日頃から服用している薬やサプリメントについて聞かれます。術後に安静にしなければならない期間が長い場合には、低用量ピルを手術の4週間前から中止しておく必要があります。生理痛がつらいからやめたくないなど、お気持ちはわかりますが、中止しておかなければ手術が延期になってしまうかもしれません。

血栓症になったらどんな治療をしますか?

血栓を溶かす内服治療がメインです。
血液をサラサラにする効果のある内服薬をしばらく続け、血栓が溶けたかどうかを超音波検査(エコー検査)などで確認します。
ごく小さな血栓であれば、症状がなく気が付かないことも少なくありません。血液検査で「Dダイマー」という検査項目の値が高くなっていて血栓症に気がつくこともあります。血栓の部位や大きさで、治療の必要性や期間が決められます。

まとめ

今回は、低用量ピルの副作用である「血栓症」についてまとめました。
血栓症を起こすと重篤な結果になる可能性がありますが、発症の頻度はごくわずかで、心配しすぎる必要はないでしょう。ただし、血栓症のリスクをきちんと把握するためにも、低用量ピルをご希望の場合には、持病や服用中の薬について正確に申告していただくことが大切です。
リスクはありますが、正しく理解して、安全に低用量ピルを服用しましょう。

監修者
産婦人科専門医原野 尚美

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