バースコントロールと3つの避妊方法

監修者:産婦人科医 原野 尚美

最終更新日

バースコントロールと3つの避妊方法

「将来のためにバースコントロールについて正しく知りたい」

「今の自分に合った避妊方法はどれなんだろう?」

このようにお悩みではありませんか?

パートナーとの関係や、自分のキャリア、将来の家族計画を考える上で、妊娠・出産のタイミングを自分で決めることはとても大切です。

この記事では、バースコントロール(産児制限)の基本的な意味から、低用量ピルやIUD(Intrauterine Device: 子宮内避妊用具)など具体的な避妊方法の種類、それぞれのメリット・デメリット、そして万が一避妊に失敗した時の対処法まで、女性の心と体に寄り添って詳しく解説します。

正しい知識を身につけて、あなたらしいライフプランを守るための一歩を踏み出しましょう。

バースコントロール(計画的な避妊)とは

バースコントロール

バースコントロール(Birth Control)とは、その名の通り「出生(Birth)」を「管理(Control)」することであり、自分の意思で妊娠の時期や間隔をコントロールすることを指します。日本では「家族計画」や「避妊」という言葉で親しまれています。

単に「妊娠しないようにする」ということだけではありません。女性が自分の体と向き合い、学業や仕事、経済状況などのライフプランに合わせて、「いつ産むか」「今は産まないか」を主体的に選択するための重要な権利でもあります。

具体的な手段としては、コンドーム、低用量ピル、IUD(子宮内避妊器具)などが挙げられます。

バースコントロールを行うメリット

バースコントロールを適切に行うことには、女性の人生において多くのメリットがあります。

  • 自分の意思で妊娠・出産のタイミングを決められる
  • 予期せぬ妊娠による精神的・身体的な負担を防げる
  • 中絶手術という悲しい選択やリスクを回避できる
  • 方法によっては(ピルなど)、生理周期が安定するなどの副次的なメリット(副効用)が期待できる

特に、現代の女性はライフスタイルが多様化しています。「今は仕事を頑張りたい」「パートナーとの時間を大切にしたい」といった希望を叶えるためにも、避妊効果の高い方法を知っておくことはお守りになります。

バースコントロールを行うデメリット・注意点

一方で、いくつかの注意点やデメリットも存在します。

  • 体質によっては副作用が出る場合がある(吐き気、不正出血など)
  • 避妊効果の高い方法(ピルやIUD)は婦人科の受診が必要
  • コンドーム以外の方法は、性感染症(STI)の予防効果がない
  • 費用がかかる(継続的な服用や装着コスト)

すべての避妊方法には、それぞれ特徴があります。「友達が使っているから」ではなく、自分の体質や生活環境に合った方法を医師と相談して選ぶことが大切です。また、性感染症予防のためには、ピルとコンドームを併用するなどの対策も必要になります。

目次

予期せぬ妊娠をしたときの影響とリスク

バースコントロールを行っていない、あるいは不確実な方法をとっていた場合、「予期せぬ妊娠」に直面する可能性があります。望まないタイミングでの妊娠は、女性の心身に大きな影響を及ぼします。

心身の準備不足による大きな不安

生理が来ないことに気づき、妊娠検査薬で陽性が出たとき、喜びよりも先に「どうしよう」というパニックに陥ることがあります。

「産める環境ではない」「パートナーになんて言おう」「仕事はどうなるの」といった不安が押し寄せ、誰にも相談できずに孤立してしまうケースも少なくありません。特に若年層や経済的に不安定な状況にある場合、そのストレスは計り知れません。

中絶手術という選択と負担

妊娠を継続できない場合、人工妊娠中絶手術を選択することになります。日本では母体保護法により、妊娠22週未満であれば手術が可能ですが、これには大きな負担が伴います。

  • 身体的負担:手術による痛み、出血、麻酔のリスク、稀に子宮へのダメージなど。
  • 精神的負担:「小さな命を失ってしまった」という罪悪感や喪失感(中絶後遺症候群など)。
  • 経済的負担:中絶手術は健康保険が適用されない自費診療となるため、妊娠週数によっては10万円〜数十万円の費用がかかります。

こうした辛い経験を避けるためにも、事前の確実なバースコントロールが非常に重要なのです。

【一覧比較】バースコントロールのための避妊方法

避妊にはいくつかの種類があり、それぞれ「避妊成功率(パール指数)」や使い方が異なります。

ここでは、日本で主に選択できる3つの方法を比較します。

避妊方法一般的な失敗率(飲み忘れ等含む)理想的な使用時の失敗率特徴
低用量ピル
(OC)
約7%0.3%高い避妊効果。
PMS等が気にならなくなる等の副効用も。
IUD / IUS
(子宮内避妊具)
0.1〜0.8%0.1〜0.6%一度装着すれば数年有効。
手間が少ない。
コンドーム
(男性用)
約13%2%性感染症予防に有効。
手軽だが失敗率が高め。

コンドーム:性感染症予防には必須

コンドームは、ドラッグストアやコンビニで手軽に入手できる最も一般的なアイテムです。性行為の際に男性器に装着し、精子が膣内に入るのを物理的に防ぎます。

  • メリット
    性感染症(HIV、クラミジア、梅毒など)の予防に唯一有効な手段です。副作用も基本的にありません。
  • デメリット
    「破れる」「外れる」「装着が遅れる」といったヒューマンエラーが起きやすく、一般的な使用での避妊失敗率は約13%と意外に高いのが現実です。より高い避妊効果を得るためには、ピルなど他の方法との併用が推奨されます。

低用量ピル(OC):女性主体の効果的な避妊

低用量ピルの仕組み

低用量ピルは、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)という2種類の女性ホルモンを含んだお薬です。毎日1回1錠服用することで、排卵を抑制し、妊娠を防ぎます。

  • メリット
    正しく服用すれば99.7%という非常に高い避妊効果を発揮します。また、生理周期が整ったり、ニキビなどの肌トラブルが気にならなくなったりと、避妊以外の「女性のQOL(生活の質)向上」につながる副次的なメリットを感じる方もいます。
  • デメリット
    飲み忘れに注意が必要です。また、飲み始めに吐き気や頭痛などのマイナートラブルが起きることがあります(多くは1〜2ヶ月で落ち着きます)。稀に血栓症のリスクがあるため、喫煙者や肥満傾向の方は医師と相談が必要です。

IUD・IUS(子宮内避妊器具):長期間の手間いらず

IUD_IUS

医師が子宮内に小さなT字型の器具を挿入し、受精卵の着床を防ぐ方法です。銅が付加された「銅付加IUD」と、黄体ホルモンを放出する「IUS(黄体ホルモン放出型システム)」があります。

  • メリット
    一度装着すれば、種類により2〜5年間効果が持続します。「飲み忘れ」のリスクがないため、失敗率が極めて低い(0.1〜0.8%)のが特徴です。IUSの場合、経血量が減ったり、生理期間の負担が軽くなるメリットも報告されています。
  • デメリット
    装着・抜去のために婦人科での処置が必要です。出産経験のない女性の場合、挿入時に痛みを感じやすいことがあります。また、装着直後は不正出血が見られることがあります。

避妊に失敗したときの対処法(緊急避妊)

「コンドームが破れてしまった」「ピルを何日も飲み忘れて性行為をしてしまった」「避妊をせずに性行為をしてしまった」

このような場合でも、諦めずにすぐに対処すれば妊娠を防げる可能性があります。これを「緊急避妊(エマージェンシー・コントラセプション)」と呼びます。

アフターピル(緊急避妊薬)を服用する

アフターピルを可能な限り早く服用

最も一般的な緊急避妊法です。性行為後、可能な限り早く(できれば24時間以内)服用することで効果を発揮します。

  • レボノルゲストレル法(従来からある緊急避妊薬)
    性行為後72時間(3日)以内の服用が必要です。早く飲むほど効果が高く、時間が経つにつれて避妊成功率は低下します。
  • ウリプリスタル酢酸エステル(海外で主流の緊急避妊薬)
    性行為後120時間(5日)以内の服用で効果が期待できるとされていますが、2024年現在、日本では未承認のお薬です。

アフターピルは排卵を遅らせたり、着床を阻害したりする作用がありますが、100%ではありません。服用後、次の生理が来るまでは避妊をするか性行為を控える必要があります。

銅付加IUDを装着する

避妊失敗から120時間(5日)以内に、医療機関で「銅付加IUD」を子宮内に挿入する方法です。

この方法は、海外のデータによると99%以上という高い避妊効果が報告されており、そのまま継続して長期的な避妊方法として使用することも可能です。

ただし、対応している医療機関が限られているため、事前に電話確認などが必要です。

妊娠が分かったときにするべきこと

どんなに気をつけていても、妊娠の可能性をゼロにはできません。もし「生理が来ない」「つわりっぽい症状がある」と感じたら、まずは市販の妊娠検査薬で確認しましょう。

低用量ピルの服用を中止する

低用量ピルを服用中に妊娠の可能性がある場合は、服用を中止し、医師の指示を仰いでください。

「妊娠初期にピルを飲んでしまったけれど、赤ちゃんへの影響は?」と心配になる方も多いですが、近年の研究では、妊娠初期の誤服用による胎児への明らかな悪影響は報告されていません。焦らずに服用を止め、医師に相談しましょう。

早めに産婦人科を受診する

早めに産婦人科へ

検査薬で陽性が出たら、できるだけ早く産婦人科を受診してください。

超音波検査で「正常な妊娠か(子宮外妊娠でないか)」「妊娠週数はどれくらいか」を確認する必要があります。

妊娠を継続する場合も、そうでない場合も、早い段階で受診することで、体への負担が少ない選択肢を検討できます。一人で抱え込まず、専門家(医師や助産師、都道府県の相談窓口など)を頼ることが大切です。

バースコントロールに関するよくある質問

最後に、診療の現場でよく寄せられる質問にお答えします。

Q. 避妊インプラントは日本でもできますか?

避妊インプラント(腕の皮下に小さな棒状の器具を埋め込み、ホルモンを放出させる方法)は、海外では普及していますが、2024年現在、日本では厚生労働省の承認が下りていません。

Q. 避妊パッチには効果がありますか?

避妊パッチは、皮膚に貼るタイプのホルモン避妊薬です。週に1回貼り替えるだけで、飲み薬(ピル)と同等以上の高い避妊効果があるとされていますが、こちらも日本では未承認です。

日本国内では未承認の医薬品・医療機器は、万が一副作用が生じた際の公的な救済制度(医薬品副作用被害救済制度)の対象外となる点に注意が必要です。

ピルを飲むと太るって本当ですか?

「ピル=太る」というイメージを持つ方は多いですが、近年の低用量ピルにおいて、医学的に体重増加との直接的な因果関係は証明されていません。

ただし、ホルモンの影響で一時的に食欲が増したり、むくみやすくなったりすることで、体重が増えたように感じることがあります。食事管理や塩分を控えることで対策可能です。

Q. 将来の妊娠に影響はありませんか?

「ピルを長く飲むと、将来妊娠しにくくなるのでは?」と心配されることがありますが、そのようなことはありません。

ピルの服用を中止すれば、通常1〜3ヶ月程度で自然な排卵リズムに戻り、妊娠が可能になります。むしろ、ピル服用によって子宮内膜症などの病気の進行を抑えることが、将来の妊孕性(妊娠する力)を守ることにつながると考えられています。

まとめ

バースコントロールは、女性が自分の人生をデザインするための大切な手段です。

「コンドームを使っているから大丈夫」と思っていても、失敗するリスクはゼロではありません。より確実性の高い避妊を希望する場合は、低用量ピルやIUDといった選択肢を検討することをおすすめします。

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参考文献

1.緊急避妊法の適正使⽤に関する指針 (令和 7 年改訂版)
2.WHO: Family planning/contraception methods
3.緊急避妊薬のスイッチOTC化について(審査等) - 厚生労働省
4.月経困難症治療剤(ヤーズ配合錠)による血栓症について - 厚生労働省
5.CDC: U.S. Medical Eligibility Criteria for Contraceptive Use, 2024

産婦人科専門医 原野尚美

監修者
産婦人科専門医原野 尚美

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