黄体ホルモン不足はなぜ怖い?妊娠・生理への影響

監修者:産婦人科医 原野 尚美

最終更新日

黄体ホルモン不足はなぜ怖い?妊娠・生理への影響

「生理前になると、急にイライラして身近な人に当たってしまう」 「肌荒れやむくみがひどくて、鏡を見るのがストレス……」

そんな自分ではコントロールできない心身の波に、一人で悩んでいませんか?

その正体は、女性の体内でダイナミックに変化している「黄体ホルモン(プロゲステロン)」かもしれません。

今回は、黄体ホルモンが私たちの心と体にどう影響しているのか、そして毎月の「揺らぎ」を穏やかにして、自分らしく過ごすためのヒントをお伝えします。

黄体ホルモンと卵胞ホルモン:2つの「サイクル」を支える存在

黄体ホルモンと卵胞ホルモン:2つの「サイクル」を支える存在

女性の体の中では、主に2つのホルモンがバトンのように交代しながらリズムを作っています。

1. 卵胞ホルモン(エストロゲン)

「美のホルモン」と呼ばれます。肌にツヤを与えたり、気持ちを前向きにしてくれたりします。生理が終わってから排卵までの、一番キラキラしている時期に多く出ます。

2. 黄体ホルモン(プロゲステロン)

「母のホルモン」と呼ばれます。排卵した後に分泌され、赤ちゃんがいつでも来られるように、子宮の中をふかふかのベッドにする役割を持っています。

役割の違いまとめ

ホルモン名体への具体的なメッセージ読者が感じる体感
卵胞ホルモン「新しい命を迎える準備をしよう!」肌がツヤツヤし、体も軽い時期
黄体ホルモン「もし妊娠していたら、全力で守らなきゃ!」むくみ、眠気、食欲が出る時期
目次

黄体ホルモンが「不足」するとどうなるの?

黄体ホルモンが「不足」するとどうなるの?

実は、この黄体ホルモンは多すぎても少なすぎても困りものです。

特に「不足」している状態は、将来赤ちゃんを望んでいる方や、生理トラブルに悩む方にとって注意が必要です。

1. 生理の周期がバラバラになる

黄体ホルモンには、子宮内膜という「赤ちゃんへのベッド」を維持する役割があります。これが足りないと、予定より早くベッドが崩れてしまい、生理が早く来たり、不正出血が起きたりします。

2. 赤ちゃんができにくい(不妊の原因)

せっかく受精卵ができても、ベッド(子宮内膜)がふかふかになっていないと、着床が難しくなります。これを専門的には「黄体機能不全」と呼びますが、要するに「お部屋の準備が間に合っていない状態」です。

3. 生理前の不調がひどくなる

意外かもしれませんが、ホルモンの量が全体的に少ないと、バランスを崩しやすくなり、結果としてPMS(月経前症候群)のイライラや落ち込みが強く出ることがあります。

なぜ生理前は「不調」を感じやすいの?

なぜ生理前は「不調」を感じやすいの?

黄体ホルモンが出ている時期、体は「栄養や水分を蓄えよう!」というモードに切り替わります。

これが、日常生活では以下のような悩みとして現れることがあります。

  • むくみ、重だるさ: 水分を溜め込みやすくなるため、足のパンパン感や体重の微増を感じやすくなります。
  • 肌荒れ: 皮脂の分泌が活発になり、生理前特有のポツンとした肌悩みができやすくなります。
  • お腹の張り: 腸の動きが緩やかになるため、スッキリしない感じが続くことがあります。
  • 心のゆらぎ: 脳内の物質に影響し、理由もなく悲しくなったり、イライラしたりします。

これらは全て、あなたの体が「命を守る準備」をサボらずにやっている証拠。決してあなたがダメなわけではありません。

今日からできる!ホルモンバランスを整えるコツ

黄体ホルモンの「暴走」を抑え、「不足」を防ぐには、日々のちょっとしたケアが何よりの薬になります。

睡眠:自分を労わる時間を作る この時期は自律神経が乱れやすく、体力を消耗しやすい時期です。「生理前はいつもより早く寝る」と決めて、休息を優先しましょう。

食事:血糖値を穏やかに保つ 甘いものが欲しくなる時期ですが、ドカ食いは血糖値の乱高下を招き、イライラを助長します。豆乳(大豆イソフラボン)やアーモンド(ビタミンE)など、栄養価の高い間食がおすすめです。

運動:無理のない「ゆるストレッチ」 お風呂上がりに股関節を伸ばしたり、深く呼吸をしたりするだけでOK。血の巡りが良くなると、骨盤周りの重だるさがスッキリしやすくなります。

辛いときは「低用量ピル」という選択肢も

辛いときは「低用量ピル」という選択肢も

「生活習慣を変えても、やっぱり毎月が辛い……」

そんな時は、医療の力を借りるのが一番の近道です。

低用量ピルは、体内のホルモン量を一定に保つお薬です。服用することで、黄体ホルモンの激しい波をなくし、体と心を凪(なぎ)の状態にしてくれます。

ピルを使うメリット

  1. 生理痛・PMSの緩和: ホルモン変動を穏やかにするため、痛みやイライラの軽減が期待できます。
  2. 生理周期のコントロール: 生理の日を予測しやすくなり、スケジュールが立てやすくなります。
  3. 肌悩みのサポート: 皮脂分泌が落ち着くため、大人ニキビの相談で処方されることもあります。

    ※服用には医師の診断が必要であり、副作用のリスクも考慮する必要があります。

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「これって病気じゃないし……」と我慢する必要はありません。まずは、あなたの今の悩みを先生に話してみることから始めてみませんか?

FAQ(よくある質問)

Q. 黄体ホルモンが多いと妊娠しやすいですか?

黄体ホルモンが「適切な量」出ていることが大切です。排卵後にしっかり分泌されることで子宮内膜が維持され、着床しやすくなります。多ければ良いというわけではなく、バランスが重要です。

Q. ピルを飲むと、将来妊娠しにくくなりませんか?

よくある誤解ですが、全く逆です。ピルを飲んでいる間は卵巣を休ませている状態なので、むしろ卵巣の力を温存することにつながります。服用をやめれば、通常1〜3ヶ月で元通りのリズムに戻り、妊娠可能な状態になります。

Q. 生理前のイライラがひどいのは、性格のせいですか?

いいえ、性格の問題ではありません。黄体ホルモンの変動によって脳内のセロトニン(幸せを感じる物質)が減ってしまうことが原因の一つです。自分を責めず、ホルモンの影響だと割り切って、ゆっくり休むことを優先してください。

参考文献

  1. 緊急避妊法の適正使⽤に関する指針 (令和 7 年改訂版)
  2. 日本産科婦人科学会 - 月経周期とホルモン
  3. 厚生労働省 e-ヘルスネット - 女性の更年期とホルモン
  4. 日本産婦人科医会 - 月経前症候群(PMS)

産婦人科専門医 原野尚美

監修者
産婦人科専門医原野 尚美

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