排卵期出血と不正出血の見分け方|量・色・時期
低用量ピルを飲んでいるときに、風邪薬や頭痛薬、皮膚科や歯科で出された薬を飲んでも大丈夫か、ピルを服用している方なら、一度は迷ったことがあるはずです。
「併用不可の薬一覧」と検索するとさまざまな情報が出てきますが、大切なのは薬の説明書(添付文書)に実際に何と書かれているかです。この記事では、代表的な低用量ピルの添付文書をもとに、「一緒に飲んではいけない薬」と「注意して使う薬」を正確に整理します。
結論|代表的な低用量ピルの添付文書に「併用禁忌」はない。ただし「併用注意」は多い
まず結論からお伝えします。
この記事で確認したマーベロン(デソゲストレル・エチニルエストラジオール錠)の添付文書(2025年10月改訂・第4版)には、「併用禁忌」の項目がありません。相互作用の欄に記載されているのは、すべて「併用注意」です。
つまり、「絶対に一緒に飲んではいけない」と添付文書で定められた薬は、この製品については現時点で記載がない、ということです。
ただし、これは「何と一緒に飲んでも問題ない」という意味ではありません。併用注意には、ピルの効果を弱めるおそれがある薬や、相手の薬の効き目を変えてしまう薬が多数挙げられています。
また、低用量ピルは製品ごとに成分や添付文書が異なります。ご自身が飲んでいる製品の添付文書を確認すること、そして他の薬を飲むときは必ず医師・薬剤師に相談することが基本です。
「併用禁忌」と「併用注意」の違い

添付文書の「相互作用」の欄には、2つの区分があります。
| 区分 | 意味 |
| 併用禁忌(併用しないこと) | 一緒に使ってはいけない組み合わせ。重大な影響が予想される |
| 併用注意(併用に注意すること) | 一緒に使うことはできるが、効果や副作用に影響が出るおそれがあるため、注意して使う組み合わせ |
「併用不可」という言葉は、正確には併用禁忌のことを指します。一方、ネット上の「併用不可の薬一覧」には、実際には併用注意にあたる薬が多く含まれていることがあります。
併用注意だからといって軽く考えてよいわけではありませんが、「禁止されている」のか「注意が必要」なのかを区別しておくと、医師や薬剤師との相談もしやすくなります。
ピルの効果が弱まるおそれがある薬・食品
ここからは、マーベロンの添付文書に記載されている併用注意を、影響の方向ごとに整理します。まずは、避妊効果に関わるためもっとも注意したいグループです。
| 薬剤・食品 | 主な用途 | 添付文書の記載 |
| リファンピシン | 結核などの治療 | 本剤の効果の減弱化及び不正性器出血の発現率が増大するおそれ |
| バルビツール酸系製剤(フェノバルビタール等)、ヒダントイン系製剤(フェニトインナトリウム等)、カルバマゼピン、トピラマート | てんかんなどの治療 | 同上 |
| ボセンタン | 肺動脈性肺高血圧症の治療 | 同上 |
| モダフィニル | 過眠症の治療 | 同上 |
| テトラサイクリン系抗生物質、ペニシリン系抗生物質(アンピシリン等) | 細菌感染症の治療 | 同上 |
| HIV感染症治療薬(リトナビル、ネルフィナビル等)、エファビレンツ、ネビラピン | HIV感染症の治療 | 本剤の作用が減弱するおそれ |
| アスナプレビル | C型肝炎の治療 | 本剤の作用が減弱するおそれ |
| セイヨウオトギリソウ(セント・ジョーンズ・ワート)含有食品 | サプリメント・ハーブ | 効果の減弱化及び不正性器出血の発現率が増大するおそれ。摂取しないよう注意すること |
なぜ効果が弱まるのか
主な理由は2つあります。
• 代謝を早める(酵素誘導)……抗てんかん薬や抗結核薬、セイヨウオトギリソウなどは、肝臓の薬物代謝酵素を誘導し、ピルの成分を早く分解させてしまうと考えられています
• 再吸収を妨げる……テトラサイクリン系やペニシリン系の抗生物質は、腸内細菌叢を変化させ、ピルの成分が腸から再吸収される仕組み(腸肝循環)を抑えると考えられています
この中で、セイヨウオトギリソウだけは添付文書が「摂取しないよう注意すること」と明確に求めています。気分の落ち込み対策などをうたうサプリメントに含まれていることがあるため、成分表示を確認してください。
ピルの血中濃度が上がるおそれがある薬
次は、ピルの成分が体内に多く残る方向に働く薬です。
| 薬剤 | 主な用途 | 添付文書の記載 |
| フルコナゾール、イトラコナゾール | 真菌(カビ)感染症の治療 | 本剤の血中濃度が上昇するおそれ |
| ボリコナゾール | 真菌感染症の治療 | 本剤とボリコナゾールの両方の血中濃度が上昇するおそれ |
| エトラビリン | HIV感染症の治療 | 本剤の血中濃度が上昇するおそれ |
| アセトアミノフェン | 解熱・鎮痛 | 本剤の血中濃度が上昇するおそれ。アセトアミノフェンの血中濃度は低下するおそれ |
抗真菌薬は、ピルの代謝酵素(CYP3A4)を阻害すると考えられています。カンジダ腟炎などで処方されることがあるため、婦人科以外で処方を受ける場合も、ピルを飲んでいることを伝えてください。
相手の薬の効き目が変わるおそれがある薬
ピルが、一緒に飲む薬のほうに影響を与えるケースもあります。
| 薬剤 | 添付文書の記載 |
| 副腎皮質ホルモン(プレドニゾロン等)、三環系抗うつ剤(イミプラミン等)、セレギリン塩酸塩、シクロスポリン、テオフィリン、オメプラゾール | これらの薬剤の作用が増強するおそれ |
| ラモトリギン | ラモトリギンの血中濃度が減少したとの報告。ピルの開始・中止時にラモトリギンの用量調節を考慮 |
| モルヒネ、サリチル酸 | これらの薬剤の血中濃度が低下するおそれ |
| 血糖降下剤(インスリン製剤、スルフォニル尿素系製剤等) | 血糖降下剤の作用が減弱することがある |
| Gn-RH誘導体(ブセレリン酢酸塩等) | これらの薬剤の作用を減弱するおそれ |
| テルビナフィン塩酸塩 | 併用で月経異常があらわれたとの報告 |
| グレカプレビル・ピブレンタスビル | ALT上昇のリスクが増加するおそれ |
とくにラモトリギン(てんかんや双極性障害の治療薬)を飲んでいる方は、ピルを始めるときだけでなく、やめるときにも用量の調整が必要になることがあります。自己判断でピルを中断せず、両方の処方医に相談してください。
市販薬で気をつけたいもの
日常的に使う市販薬のなかにも、併用注意にあたる成分があります。
解熱鎮痛薬・かぜ薬
• アセトアミノフェン……多くの総合感冒薬や解熱鎮痛薬に含まれる成分です。添付文書では、ピルの血中濃度が上昇するおそれと、アセトアミノフェンの血中濃度が低下するおそれの両方が記載されています
• サリチル酸(アスピリンなど)……血中濃度が低下するおそれがあると記載されています
併用注意は「一緒に飲んではいけない」という意味ではありません。ただし、成分は製品によって異なるため、市販薬を買うときは薬剤師や登録販売者に「低用量ピルを飲んでいる」と伝えるのが確実です。
なお、ロキソプロフェンやイブプロフェンは、マーベロンの添付文書の併用注意には記載されていません。記載がないことは「必ず安全」を意味するものではありませんが、現時点の添付文書上は特段の注意喚起がない、ということです。
サプリメント・ハーブ
前述のとおり、セイヨウオトギリソウ(セント・ジョーンズ・ワート)含有食品は摂取しないよう注意することとされています。ハーブティーやリラックス系のサプリメントは、購入前に成分表示を確認しましょう。
飲食物は?グレープフルーツ・お酒・カフェイン
ネット上では「ピルとグレープフルーツは併用不可」といった情報を見かけることがあります。しかし、マーベロンの添付文書の相互作用欄には、グレープフルーツ、アルコール、カフェインの記載はありません。食品で明記されているのはセイヨウオトギリソウのみです。
ただし、注意しておきたい点があります。
• お酒を飲みすぎて吐いた場合……添付文書では、服用中に激しい下痢や嘔吐が続いた場合は吸収不良を来すことがあり、妊娠する可能性が高くなるので、その周期は他の避妊法を併用することとされています
• 製品ごとの違い……他の製品の添付文書では記載が異なる場合があります
「飲食物との飲み合わせ」よりも、嘔吐や下痢で薬が吸収されないことのほうが、実際には避妊効果に影響しやすいと覚えておきましょう。
薬の組み合わせ以外の「不可」|ピル自体を飲めない人
「併用不可」を調べている方の中には、「自分はピルを飲んでいいのか」を知りたい方もいるはずです。薬の組み合わせとは別に、ピルそのものを飲めない条件(禁忌)が添付文書で定められています。主なものは次のとおりです。
• 血栓性静脈炎、肺塞栓症、脳血管障害、冠動脈疾患またはその既往歴のある方
• 35歳以上で1日15本以上の喫煙者
• 前兆(閃輝暗点、星型閃光等)を伴う片頭痛の方
• 血栓性素因のある方、抗リン脂質抗体症候群の方
• 手術前4週以内、術後2週以内、産後4週以内、長期間安静状態の方
• 重篤な肝障害、肝腫瘍のある方
• 脂質代謝異常のある方、高血圧のある方(軽度を除く)
• エストロゲン依存性悪性腫瘍(乳癌、子宮内膜癌など)、子宮頸癌およびその疑いのある方
• 妊婦または妊娠している可能性のある方、授乳中の方
手術の予定がある場合は、手術前4週以内は服用できないことに注意が必要です。手術を受ける医療機関には、必ずピルを飲んでいることを伝えてください。
診療科別|ピルとの飲み合わせが問題になりやすい場面
併用注意の薬は、婦人科以外のさまざまな診療科で処方されます。どんな場面で出会いやすいかを知っておくと、伝え忘れを防げます。
| 受診する場面 | 処方されることがある薬の例 | ピルとの関係(添付文書) |
| 皮膚科(ニキビ、皮膚の感染症) | テトラサイクリン系の抗生物質 | ピルの効果の減弱化、不正性器出血の発現率増大のおそれ |
| 皮膚科(爪や皮膚の水虫) | テルビナフィン塩酸塩、イトラコナゾール | 月経異常の報告/ピルの血中濃度上昇のおそれ |
| 歯科・耳鼻科・内科(細菌感染) | ペニシリン系の抗生物質 | ピルの効果の減弱化、不正性器出血の発現率増大のおそれ |
| 婦人科・内科(カンジダなど真菌感染) | フルコナゾールなどの抗真菌薬 | ピルの血中濃度上昇のおそれ |
| 脳神経内科・精神科 | カルバマゼピン、フェニトイン、トピラマート、ラモトリギン、三環系抗うつ剤 | ピルの効果の減弱化/相手の薬の血中濃度や作用の変化 |
| 呼吸器内科(ぜんそく) | テオフィリン | テオフィリンの作用が増強するおそれ |
| 消化器内科 | オメプラゾール | オメプラゾールの作用が増強するおそれ |
| 内分泌内科(糖尿病) | インスリン製剤などの血糖降下剤 | 血糖降下剤の作用が減弱することがある |
| 皮膚科・膠原病内科など | プレドニゾロンなどの副腎皮質ホルモン | 副腎皮質ホルモンの作用が増強するおそれ |
表の中には、ピル側ではなく相手の薬の効き目が変わるものも含まれています。たとえば糖尿病の治療中の方は、添付文書で「血糖値その他患者の状態を十分観察し、血糖降下剤の用量を調節するなど注意する」とされています。ピルを始めるとき、やめるときは、持病の主治医にも伝えてください。
抗生物質を飲む期間は短くても注意
風邪をこじらせたときや、歯の治療のあとなどに、数日間だけ抗生物質を処方されることがあります。期間が短くても、テトラサイクリン系・ペニシリン系は併用注意にあたります。「数日だけだから」と伝え忘れないようにしましょう。避妊効果が心配な場合は、その期間の避妊方法について処方医に相談してください。
飲み合わせが心配なときの相談のしかた
他の医療機関を受診するときは必ず伝える
内科、皮膚科、歯科、精神科など、どの診療科でも「低用量ピルを飲んでいます」と伝えることが大切です。お薬手帳に記録しておけば、言い忘れを防げます。
市販薬を買うときは薬剤師・登録販売者に伝える
薬局やドラッグストアで市販薬を選ぶときも、ピルを服用中であることを伝えてください。
ピルの処方元にも、他の薬のことを伝える
新しく薬を飲み始めたら、次回の診察でピルの処方医にも伝えましょう。オンライン診療の指針でも、医師は患者が現在服薬している医薬品を確認しなければならず、患者は正確に申告すべきとされています。
避妊効果に不安が残るときは
併用注意の薬を飲んでいる期間に避妊効果が心配な場合は、コンドームなど他の避妊法を併用することを処方医に相談してください。避妊に失敗したかもしれない場合は、緊急避妊薬という選択肢もあります。2026年2月からは、厚生労働省が公表する一覧に掲載された薬局でも購入できるようになっています。
低用量ピルの併用不可に関するよくある質問
Q. 低用量ピルと絶対に一緒に飲んではいけない薬はありますか? A. マーベロンの添付文書(2025年10月改訂)には併用禁忌の項目はありません。ただし製品ごとに添付文書は異なるため、ご自身の薬で確認してください。
Q. 風邪薬は飲んでもいいですか? A. 多くの総合感冒薬に含まれるアセトアミノフェンは併用注意です。購入時に薬剤師や登録販売者に相談してください。
Q. 抗生物質を処方されました。 A. テトラサイクリン系・ペニシリン系は、ピルの効果が弱まるおそれがあるとされています。処方医にピル服用中であることを伝え、必要に応じて他の避妊法の併用を相談してください。
Q. 鎮痛薬のロキソプロフェンは大丈夫ですか? A. マーベロンの添付文書の併用注意には記載がありません。ただし持病や他の薬との兼ね合いもあるため、購入時に確認してください。
Q. グレープフルーツジュースは避けるべきですか? A. マーベロンの添付文書には記載がありません。気になる場合は処方医に相談してください。
Q. アフターピルと一緒に飲んでもいいですか? A. 飲み忘れなどで緊急避妊が必要になった場合は、低用量ピルを服用中であることを医師や薬剤師に伝えたうえで、その後の飲み方も含めて指示を受けてください。
まとめ
• 「併用不可」は正確には「併用禁忌」のこと
• マーベロンの添付文書(2025年10月改訂)には併用禁忌の項目はなく、記載はすべて併用注意
• 抗てんかん薬、抗結核薬、一部の抗生物質、HIV治療薬、セイヨウオトギリソウはピルの効果を弱めるおそれがある
• 抗真菌薬やアセトアミノフェンは、ピルの血中濃度を上げるおそれがある
• ラモトリギンなど、ピルが相手の薬の効き目を変えるケースもある
• グレープフルーツ・アルコール・カフェインは添付文書に記載がない。ただし嘔吐・下痢には注意
• 薬の組み合わせとは別に、ピル自体を飲めない条件(禁忌)がある
• 他の医療機関や薬局では、必ず「ピルを飲んでいる」と伝える
ピルの飲み合わせは「全部ダメ」でも「全部OK」でもありません。添付文書の区分を知り、迷ったら伝えて確認する。それがいちばん確実な方法です。
出典
1. マーベロン21/マーベロン28 添付文書(2025年10月改訂・第4版/オルガノン株式会社)
2. 厚生労働省「オンライン診療の適切な実施に関する指針」(令和8年4月改訂







