排卵期出血と不正出血の見分け方|量・色・時期
「中用量ピルには何種類あるの?」「低用量ピルとは何が違うの?」生理日の移動や月経困難症の相談を考えている方から、よくいただく疑問です。
結論からお伝えすると、日本で中用量ピルとして扱われている医療用医薬品はごく限られており、代表的なものはプラノバール配合錠です。そして意外に知られていないのが、「中用量ピル」という呼び方は、法律や添付文書で定められた正式な分類名ではないということ。この記事では、実際の添付文書に書かれている内容をもとに、中用量ピルの種類と成分、ほかのピルとの違い、副作用や注意点を整理します。
中用量ピルとは?エストロゲン量による「通称」の分類

ピルは、卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲスチン)の2種類の女性ホルモンを配合した薬です。このうちエストロゲンの含有量がどのくらいかによって、超低用量・低用量・中用量と呼び分けられています。
ただし、この呼び分けは医療現場や解説記事で使われている通称であり、添付文書上の正式名称ではありません。たとえば代表的な中用量ピルであるプラノバール配合錠の添付文書に記載されている薬効分類名は「黄体・卵胞ホルモン配合剤」で、「中用量ピル」という語は出てきません。
| 呼び方 | エストロゲン量の目安 | 主に使われる場面 |
| 超低用量ピル | 0.02mg前後 | 月経困難症・子宮内膜症などの治療 |
| 低用量ピル | 0.03〜0.035mg程度 | 避妊、月経困難症、PMSなど |
| 中用量ピル | 0.05mg | 機能性子宮出血、月経困難症など。生理日の移動に用いられることも |
| ミニピル | エストロゲンを含まない(黄体ホルモン単剤) | 主に避妊 |
エストロゲンの量が多いほどホルモンをコントロールする力は強くなりますが、その分、吐き気などの副作用も出やすくなる傾向があります。「中用量ピルのほうが優れている」ということではなく、目的に合わせて使い分ける薬だと考えてください。
中用量ピルの代表的な種類「プラノバール配合錠」の成分と効能
現在、日本で中用量ピルとしてもっとも広く使われているのがプラノバール配合錠(あすか製薬)です。添付文書によると、1錠の組成は次のとおりです。
• ノルゲストレル(黄体ホルモン)0.5mg
• エチニルエストラジオール(卵胞ホルモン)0.05mg
エチニルエストラジオール0.05mgという量が、低用量ピル(0.03mg前後)より多いことから「中用量」と呼ばれています。
そして、承認されている効能又は効果は次の2つの区分だけです。
1. 機能性子宮出血
2. 月経困難症、月経周期異常(稀発月経、頻発月経)又は生殖補助医療における調節卵巣刺激の開始時期の調整、過多月経、子宮内膜症、卵巣機能不全
用法及び用量も効能ごとに決まっており、機能性子宮出血では1日1錠を7〜10日間連続投与、月経困難症などでは1日1錠を月経周期第5日から約3週間連続投与とされています。
ここで押さえておきたいのが、この効能・効果の中に「避妊」も「生理日の移動」も含まれていないという点です。作用のしくみ(脳下垂体前葉に作用して卵胞刺激ホルモン・黄体形成ホルモンの分泌を抑える)から、結果として排卵が抑えられたり出血のタイミングが変わったりしますが、添付文書上の承認された使い方とは別のものになります。この点は後ほどくわしく触れます。
なお、同じ成分の製品としてドオルトンという名前を目にすることがありますが、製品ごとに販売状況が変わるため、実際に処方される薬の名前は医師・薬剤師に確認してください。
中用量ピルと低用量ピル・超低用量ピル・ミニピル・アフターピルの違い
「種類」を調べている方の多くは、中用量ピル内部の種類よりも、ほかのピルとの違いを知りたいはずです。整理すると次のようになります。
| 種類 | ホルモンの構成 | 主な用途 | 飲み方のイメージ |
| 中用量ピル | 卵胞+黄体ホルモン(エストロゲン0.05mg) | 機能性子宮出血、月経困難症など | 目的に応じて数日〜約3週間 |
| 低用量ピル | 卵胞+黄体ホルモン(エストロゲン0.03mg前後) | 避妊、月経困難症、PMS など | 原則として毎日1錠を継続 |
| 超低用量ピル | 卵胞+黄体ホルモン(エストロゲン0.02mg前後) | 月経困難症、子宮内膜症の治療 | 毎日1錠を継続 |
| ミニピル | 黄体ホルモンのみ | 主に避妊 | 毎日ほぼ同じ時刻に1錠 |
| アフターピル(緊急避妊薬) | 黄体ホルモン(レボノルゲストレル1.5mg) | 緊急避妊 | 性交後72時間以内に1錠 |
いちばん大きな違いは「継続して飲む薬か、期間を区切って飲む薬か」です。低用量ピル・超低用量ピルが毎日の継続服用を前提とするのに対し、中用量ピルは症状や目的に合わせて一定期間だけ服用するのが一般的です。
また、アフターピルは2026年2月2日から要指導医薬品として薬局でも販売が始まりましたが、これは緊急避妊薬に限った話です。中用量ピルや低用量ピルは今も処方箋が必要な医薬品で、薬局やドラッグストアの店頭で選んで買うことはできません。
中用量ピルが使われる主な目的と「生理日移動」の位置づけ
中用量ピルの名前を見かける場面として多いのが、旅行・試験・結婚式などに合わせて生理をずらす「月経移動(生理日移動)」です。ただし、前述のとおりプラノバール配合錠の承認された効能・効果に月経移動は含まれていません。医師が個別に判断して処方する使い方であり、保険が使えず自由診療になるのが通常です。
一方で、月経周期の変更そのものが承認されている薬も存在します。黄体ホルモン単剤のノアルテン錠(5mg/ノルエチステロン)は、効能又は効果に「月経周期の変更(短縮及び延長)」が明記されており、用法及び用量も次のように定められています。
• 月経周期の変更(延長):1日5mgを月経予定5日前から投与し始め、月経周期延長希望日まで連続投与する
• 月経周期の変更(短縮):1日5mgを卵胞期に投与し、数日間連続投与する
同薬の添付文書に掲載されている再評価時の臨床成績では、月経周期の変更(延長)の有効率は87.4%(76/87例)、短縮は78.3%(36/46例)と報告されています。
つまり、生理をずらしたいという相談に対して、医師が中用量ピルを選ぶこともあれば、別の薬を選ぶこともあるということです。「生理をずらす=中用量ピル」と決めつけず、希望する時期と体質を伝えて医師に判断してもらうのが確実です。
中用量ピルの副作用|吐き気・頭痛・不正出血と血栓症
プラノバール配合錠の添付文書に記載されている主な副作用は次のとおりです。
• 消化器:悪心・嘔吐、食欲不振、胃痛など
• 精神神経系:頭痛、眠気、倦怠感
• 子宮:不正出血(破綻出血、点状出血)、経血量の変化
• 乳房:乳房緊満感
• 電解質代謝:浮腫、体重増加
• 循環器:動悸、血圧上昇
エストロゲンの量が多いぶん、低用量ピルより吐き気が出やすいといわれます。服用のタイミングを食後にする、就寝前にするなどの工夫を医師に相談してみてください。
もっとも注意が必要なのが、重大な副作用として記載されている血栓症(四肢、肺、心、脳、網膜等)です。発現頻度は0.1〜0.2%未満とされていますが、添付文書には「年齢、喫煙、肥満、家族歴等のリスク因子の有無にかかわらず血栓症があらわれることがある」と明記されています。
次のような症状があらわれた場合は、ただちに服用を中止して救急医療機関を受診してください。
下肢の急激な疼痛・腫脹、突然の息切れ、胸痛、激しい頭痛、四肢の脱力・麻痺、構語障害、急性視力障害等
また、下肢の疼痛・腫脹・しびれ・発赤・熱感、頭痛、嘔気・嘔吐なども血栓症が疑われる症状として挙げられており、軽度であってもすぐに相談することとされています。血栓症を疑ってほかの医療機関を受診するときは、ピルを服用していることを必ず医師に伝えてください。
中用量ピルを飲めない人・注意が必要な人
種類を比べる以前に、そもそも服用できない場合があります。プラノバール配合錠の禁忌には次のような方が挙げられています(一部抜粋)。
• 血栓性静脈炎、肺塞栓症またはその既往歴のある方
• エストロゲン依存性悪性腫瘍(乳癌、子宮内膜癌など)およびその疑いのある方
• 重篤な肝障害のある方
• 妊婦または妊娠している可能性のある方
• 診断の確定していない異常性器出血のある方
• 脂質代謝異常のある方
• 鎌状赤血球貧血のある方
加えて、40歳以上の方、子宮筋腫のある方、糖尿病・高血圧・てんかんのある方などは「特定の背景を有する患者」として慎重な判断が必要とされています。喫煙については、外国の報告として1日15本以上・35歳以上で心血管系の重篤な副作用の危険性が増大するとされ、投与する場合は禁煙が望ましいと記載されています。
自己判断で「自分は大丈夫」と決めず、既往歴・服用中の薬・喫煙の有無は正直に申告してください。
中用量ピルの処方を受ける方法|婦人科とオンライン診療
中用量ピルは処方箋医薬品に指定されており、医薬品医療機器等法(薬機法)第49条第1項により、医師等から処方箋の交付を受けた人以外へ、正当な理由なく販売・授与することはできません。つまり市販薬として店頭で選ぶことはできず、医師の診察を受ける必要があります。
入手方法は大きく2つです。
1. 婦人科・産婦人科を受診する……内診や超音波検査など、必要に応じて検査を受けられるのが利点です。症状の原因を調べたい場合に向いています。
2. オンライン診療を利用する……自宅から診察を受け、薬を配送で受け取れます。通院時間が取りにくい方、対面受診に抵抗がある方に選ばれています。
なお、インターネット通販や個人輸入代行でピルを購入するのは避けてください。厚生労働省は、個人輸入される医薬品の品質・有効性・安全性について日本の薬機法に基づく確認がなされていないこと、健康被害が生じても医薬品副作用被害救済制度の救済対象とならないことを注意喚起しています。
中用量ピルの種類に関するよくある質問
Q. 中用量ピルは何種類ありますか? A. 現在国内で中用量ピルとして処方される医療用医薬品はごく少数で、代表的なものはプラノバール配合錠です。製品の販売状況は変わることがあるため、実際に処方される薬の名称は医療機関でご確認ください。
Q. 中用量ピルに避妊効果はありますか? A. プラノバール配合錠の承認された効能・効果に避妊は含まれていません。避妊を目的とする場合は、避妊の効能を持つピルについて医師に相談してください。
Q. 低用量ピルと中用量ピル、どちらを選べばよいですか? A. 目的によって異なります。毎月の生理痛やPMSを継続的に和らげたいのか、特定の日程に合わせて生理をずらしたいのかで選択肢が変わるため、希望を医師に伝えて判断してもらうのが確実です。
Q. ジェネリック医薬品はありますか? A. 同一成分の製品が流通していた時期もありますが、供給状況は変動します。処方時に医師・薬剤師へご確認ください。
Q. 副作用の吐き気が心配です。 A. 中用量ピルは低用量ピルよりエストロゲン量が多く、悪心・嘔吐は添付文書にも記載された副作用です。服用時間の工夫や、別の選択肢の検討も含めて事前に相談しておくと安心です。
まとめ
• 「中用量ピル」はエストロゲン量による通称で、代表的な製品はプラノバール配合錠(ノルゲストレル0.5mg+エチニルエストラジオール0.05mg)
• 承認された効能・効果は機能性子宮出血、月経困難症などで、避妊や生理日移動は含まれていない
• 月経周期の変更が効能・効果として承認されている薬(ノアルテン錠など)は別に存在する
• 重大な副作用として血栓症があり、症状が出たらただちに中止して受診する
• 処方箋医薬品のため市販されておらず、婦人科またはオンライン診療で医師の診察を受ける必要がある
種類の違いは「どれが強いか」ではなく「どの目的に向いているか」の違いです。気になる症状や希望する時期を整理したうえで、医師に相談してみてください。
出典
1. プラノバール配合錠 添付文書(2024年7月改訂・第4版/あすか製薬株式会社)
2. PMDA 医療用医薬品情報「ノアルテン錠(5mg)」(2026年4月改訂・第2版)
3. 厚生労働省「薬局医薬品の分類」(薬機法第49条・処方箋医薬品)
5. 厚生労働省「医薬品等を海外から購入しようとされる方へ」







