低用量ピルのファボワールとは？ニキビに効くって本当？

監修者：産婦人科医原野尚美

最終更新日

2025-12-04

低用量ピルのファボワールは、避妊以外にもニキビ改善に効果があるといわれていますが、「本当に肌がきれいになるの？」と疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。

ファボワールはホルモンバランスを整える作用があり、肌トラブルの改善が期待される一方で、体質によっては思わぬ副作用があらわれることもあります。

本記事では、ファボワールの基本情報やニキビへの効果、注意すべきポイントまで詳しく解説します。ピルで肌荒れを改善したい方は、ぜひ最後までご覧ください。

ファボワールとは

ファボワールとは、日本国内で処方されている低用量ピルの一種です。主に避妊を目的として使用されています。低用量ピルは女性ホルモンに類似した成分を含む医薬品で、ホルモンバランスを一定に保つことで排卵を抑制する効果を持つことが特徴です。

ファボワールは第3世代のピルに分類され、従来のピルに比べて副作用が少ないとされています。避妊だけでなく、月経困難症やPMS（月経前症候群）、生理不順などの改善にも有効です。

ファボワールに含まれる有効成分は、デソゲストレル（黄体ホルモン）とエチニルエストラジオール（卵胞ホルモン）の2種類です。これらの成分が体内のホルモン環境を整えることで、以下のような変化をもたらします。

これにより、精子が子宮内に入るのを防いだり、受精卵が着床するのを阻止したりして避妊効果を発揮します。

ファボワールには、「ファボワール錠21」と「ファボワール錠28」の2種類があります。ファボワール錠21は実薬を1日1錠、毎日同じ時間に服用するのを21日間続けてください。その後、7日間休薬します。

ファボワール錠28も、毎日同じ時間に実薬を21日間服用します。その後は、有効成分の入っていない偽薬を7日間服用してください。休薬中もしくは偽薬を服用中に生理（消退出血）が起こります。

ファボワールが正式に承認を受けている効果は、避妊効果のみです。しかし、他にもさまざまな効果が期待されるため、実際には避妊以外の用途でも用いられています。以下では、それぞれの効果について詳しく解説します。

ファボワールの主な効果は避妊です。配合されているエチニルエストラジオールとデソゲストレルの2つのホルモンによって排卵が抑えられ、妊娠の成立を防ぎます。

また、子宮内膜の厚みを薄く保つことで、受精卵が着床しづらい環境をつくり、頸管粘液を変化させて精子の侵入を抑える効果もあわせ持ちます。飲み忘れなく適切な方法でファボワールを服用したときの避妊率は、99.7％です。

ファボワールに含まれるデソゲストレルには、男性ホルモンの働きを抑制する効果があるため、ニキビ改善にも有効だとされています。男性ホルモンには皮脂分泌を促進してニキビをできやすくする働きがあり、これを抑制することでニキビを改善するのです。

ただし、体質や服用初期のホルモン変動によって、一時的にニキビが悪化する場合もあるため、継続的な服用と経過観察が重要です。

月経困難症とは生理中に強い腹痛や腰痛、頭痛などの症状があらわれる状態のことです。ファボワールは排卵を抑制することで子宮内膜の増殖を抑え、経血量の減少や子宮収縮の抑制効果を発揮します。その結果、生理に伴う痛みを軽減することが可能です。

海外では、次のような研究結果が出ています。デソゲストレルを投与された18歳から45歳までの女性322名のうち、前6周期以内に19.3％が月経困難症を、10.9％が重度の月経困難症を患っていました。

これが9周期後には3.1％に減少したとの報告があります。このことから、デソゲストレルを含むファボワールは、月経困難症の改善に効果があるといえます。

PMSは、生理前に起こる情緒不安定やイライラ、頭痛、むくみなどの不快な症状のことです。これらの症状は、ホルモンの急激な変動によって引き起こされると考えられています。

ファボワールを服用するとホルモン状態を一定に保てるため、PMSの改善効果が期待できます。

ファボワールは28日周期で服用する仕組みになっており、休薬期間または偽薬を服用する期間に生理が起こるようになります。そのため、生理周期を規則的に整えることが可能です。生理が数カ月こない、周期が極端に短いまたは長いといった悩みを解決するよい選択肢となります。

子宮内膜症は、本来子宮内に存在するべき内膜組織が子宮以外の場所で増殖し、炎症や痛みを引き起こす疾患です。ファボワールの服用により排卵を抑え、子宮内膜の増殖を抑制することで、病変部の進行を遅らせたり、痛みを軽減したりする効果が期待できます。

ファボワールを服用すると、人によっては副作用があらわれることがあります。ここでは、重大な副作用とその他の副作用に分けてそれぞれ見ていきましょう。

重大な副作用として、血栓症が報告されています。血栓症とは、血管内に血のかたまりができ、血流を妨げてしまう疾患です。

症状としては、ふくらはぎの腫れや痛み、息切れ、胸の痛み、激しい頭痛、視覚症状などがあらわれることがあります。これらの症状が見られたら、ただちに医師の診察を受けてください。

その他の副作用としては、主に次のものが報告されています。

	5％以上	0.1～5％未満	頻度不明
主な副作用	乳房痛、悪心、頭痛	発疹、視力障害、肝機能異常、体重増加、不正性器出血、血圧上昇、嘔吐、下痢、腹痛、めまい、眠気、腰痛、倦怠感など	網膜血流障害による視力障害、黄疸、乳汁漏出、抑うつ、イライラ感、片頭痛、脱毛、血管性浮腫

これらの副作用は服用開始初期に見られることが多く、数週間から数カ月で自然に治まる場合がほとんどです。症状が強く出たり長期間続いたりするときは、自己判断で服用を中止せず医師に相談してください。