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子宮頸がんワクチンはなぜ推奨されている?効果と安全性を解説
監修者:産婦人科医 原野尚美
最終更新日
皆さん、「HPVワクチン(子宮頸がんワクチン)」の接種はお済みでしょうか?30代、40代の方は、自分が中学生・高校生の頃にはワクチン自体がなかった、あるいはワクチンの接種が差し控えられていたという方が、多いと思います。「自分は打たなかったけど、子どもには打った方がいいのかな」と迷っている方もいるかもしれません。
ここで改めて、HPVワクチンが必要な理由、効果、安全性など、さまざまな観点から皆さんに情報をお伝えしたいと思います。今後、情報が必要になったときの参考になれば嬉しいです。
目次
- 1.子宮頸がんは「予防が重要」なワケ
- 2.HPVワクチンは再度、「接種を推奨」に
- 3.HPVワクチンの効果
- 4.男性もHPVワクチンを接種できます
- 5.ワクチン接種に関わらず「正しい避妊とがん検診」を
- 6.まとめ
子宮頸がんは「予防が重要」なワケ
まず、そもそも子宮頸がんに「ワクチン」が必要なのか、その理由についてご紹介します。
①子宮頸がんは「ウイルス」が原因
子宮頸がんは、その他のがんとは違い、ウイルスに感染することで生じるとわかっています。一部のごく特殊な子宮頸がんを除いて、ほぼ100%が「ヒトパピローマウイルス(HPV)」によるものです。ですから、ウイルスに感染しないことで、子宮頸がんの発症を予防できるということになります。現時点では、唯一の「予防できるがん」です。
このウイルスは、主に性行為で感染します。できれば初めての性行為の前に予防を始めるのが望ましいため、中学生や高校生が、予防のワクチンの接種対象になっています。
②若い世代でも発症する
がんは、高齢になってから、早くても中高年以降になるものというイメージを持っている方が、多いのではないでしょうか?
ところが、子宮頚がんはもっと若い年代の方に多いがんです。30代、40代での発症が特に多く、若い女性に発症するがんの中では、乳がんに次いで2番目に多いという特徴があります。
ウイルスに曝露したら、必ず子宮頸がんになるというわけではありません。性行為によってウイルスが体内に入り、多くはそのままウイルスが排出されて何も起こりませんが、一部はそこから数か月〜数年をかけてゆっくりと子宮頸部異形成や子宮頚がんの状態へと進行していきます。
20代で子宮頸がんになり、治療のために妊娠の機会を失ってしまう、小さい子どもを残して亡くなってしまうという悲しいケースも、少なからずあります。
予防できる手段があるので、ぜひワクチンの接種を考えていただきたいです。
③早期発見が難しい
子宮頚がんは、なかなか早期発見が難しいです。子宮頚がんの前段階の「子宮頸部異形成」という状態も、ある程度進行するまでほとんど症状が出ません。
2年に1回のがん検診を受けるとしても、タイミングによってはある程度進行してしまっている可能性もあります。もし、次のような症状がある方は、早いうちに婦人科を受診して検査をしましょう。
【注意すべき症状】
- 生理以外の期間での不正出血が頻繁にある
- 性行為や激しいスポーツの後に出血がある
- 生理以外の期間で下腹部痛、腰痛がある
特に、低用量ピルを服用しはじめて数か月以上経っているにも関わらず、急に不正出血が増えてきたという場合は、要注意です。
また、更年期に差し掛かり不正出血が増えてきた方も、一度はがん検診を受けましょう。「更年期だから、生理不順になっている」と思っている方の中にも、子宮頸がんが紛れている場合があります。
HPVワクチンは再度、「接種を推奨」に
HPVワクチンは、子宮頸がんの予防に効果があるとされ、世界中で接種が推奨されています。ところが、日本ではワクチンの接種が始まったあと、すぐに接種が差し控えられる状況になってしまいました。現在は接種を推奨されていますが、それまでの経緯についてご説明します。
接種が差し控えられていた経緯
世界中でHPVワクチンの接種が進み、子宮頚がんにかかる人が減ってきたという事実を踏まえ、日本でも2013年から、HPVワクチンの公費での接種が始まりました。
しかし、副反応への懸念が高まり、「HPVワクチンは危ないのではないか?」というニュースが飛び交うようになりました。心配された副反応は、ワクチン接種後に体の痛みやしびれ、めまいなどが残ってしまったというもので、当時のニュースをなんとなく覚えている方もいるのではないでしょうか?
こういった理由で、国による積極的な接種の推奨が一時的に中止されることとなりました。
HPVワクチンの安全性の調査
国外のデータだけでなく、国内のデータもたくさん集められ、安全なのかどうかが検証されてきました。調査結果について、簡単にご紹介します。こうした調査では、注射後の腫れや痛みといった数日以内におさまる副反応ではなく、長く残ってしまった症状について調べています。
2017 年4月末までに報告された、副反応疑いの症状がでた方の人数は、3,080人(0.09%)であり、そのうち医師や企業が重篤と判断したものは 1,737人(0.05%)でした。まず、副反応疑いの症状が出る頻度自体が、ごく低いということがわかります。
副反応についての調査としては、約3万人の若い女性を対象に、「副反応疑いの症状」の有無を調査した「名古屋スタディ」と呼ばれている研究が有名です。この研究では、ワクチン接種をしている人・していない人で、副反応疑いの症状として代表的な24の症状の発生割合は、変わらないとわかりました。
【名古屋スタディで比較された代表的な症状の例】
- 生理不順
- 関節痛
- 頭痛
- 疲れやすい
- めまいがする
- 眠れない
- 歩けなくなった
副反応だと思っていたこれらの症状は、ワクチンを接種した人だけに特徴的な症状ではなかったのです。
こうした結果を受けて、厚生労働省は2022年にHPVワクチンを再び勧奨するようになりました。
HPVワクチンの副反応について
安全性が確かめられたといっても、副反応が全くないというわけではありません。
接種したときに驚いてしまわないよう、どのような副反応があるのか事前に知っておくとよいでしょう。
2価ワクチン:サーバリックス | 4価ワクチン:ガーダシル | 9価ワクチン:シルガード | |
---|---|---|---|
50%以上 | 疼痛、腫れ、疲労感 | 疼痛 | 疼痛 |
10〜50% | かゆみ、筋肉痛、関節痛、赤み | 腫れ、赤み | 腫れ、赤み、頭痛 |
1〜10% | 蕁麻疹、めまい、発熱 | 頭痛、かゆみ、発熱 | めまい、吐き気、かゆみ、発熱、疲労感 |
頻度は多少変わりますが、どのワクチンを選んでも、大体同じような副反応が起こります。
HPVワクチンの効果
ここまでは、HPVワクチンの安全性に着目してお話をしてきました。次からは、効果についてご紹介します。
日本では、毎年11,000人が新たに子宮頸がんと診断され、2,900人が亡くなっています。ワクチン接種がすすまなかったこともあり、人数は全く減っていません。
HPVワクチンの接種が進んでいる国の現状をご紹介します。
たとえば、スウェーデンでは、2006年から4価HPVワクチンの接種が始まりました。2006年から2017年にかけて、約167万人の女性を対象に、31歳になるまでの間に子宮頸がんを発症したかどうかを調べた報告があります。
その結果、ワクチンを接種しなかった人と比べて、17歳までにワクチンを接種した人では、子宮頸がんを発症する確率が88%も減少することがわかりました。
デンマークでも87万人を対象にした類似の研究があり、17歳までにワクチンを接種することで、子宮頸がんの発生率が86%も減少しています。
イギリスは2価ワクチンでの結果ですが、12〜13歳でワクチンを接種した場合に、子宮頸がんの発生率が87%減少したと報告されています。
先進国でのデータをご紹介しましたが、WHO(世界保健機構)の活動によって、ブータンやルワンダなどの開発途上国でも、90%を超えるワクチン接種率となっており、このまま世界中でHPVワクチンの接種がすすんだ場合、21世紀のうちに子宮頸がんは撲滅できる見込みです。
日本は接種が遅れていますが、今からでも接種をすすめていけば、子宮頸がんで悲しい思いをする人を減らすことができます。
男性もHPVワクチンを接種できます
最近では、男性にも助成をおこなう自治体が増えてきています。助成がない場合には高額になってしまいますが、自費で接種することも可能です。すでに海外では、オーストラリアやカナダは約80%、イギリスやアメリカでは約60%の男性が、HPVワクチンを接種しています。
男性もHPVワクチンを接種することで、女性の子宮頸がん発症を抑えることができるほか、肛門がん、中咽頭がん、尖圭コンジローマなどを減らす効果もあります。女性だけでなく、男性にとっても、メリットのあるワクチンです。
2価、4価、9価のどのワクチンを接種してもよいですが、9価ワクチンはよりたくさんの種類のHPVを予防できるため、子宮頸がんや肛門がんなど、さまざまな疾患の予防効果が高いです。
ワクチン接種に関わらず「正しい避妊とがん検診」を
ワクチンを接種した・していないに関わらず、妊娠を望んでいない場合には正しい避妊をおこない、定期的にがん検診を受けましょう。
ワクチンを接種していれば、コンドームを用いなくても、HPVの感染からはある程度身を守ることができます。ただし、コンドームではHPVの感染を100%は防げないこと、その他の感染症からは身を守れないことは、忘れないでください。
また、がん検診は、ワクチンを接種したかどうかに関係なく、皆さんに受けていただきたいです。ワクチンで防げないタイプのHPVが原因になる子宮頸がんも、わずかですが存在します。症状が出る前に、少しでも早い段階で見つけるためには、定期的に検査をしなければなりません。
ワクチンは「予防」、がん検診は「早期発見」が目的です。どちらも上手に活用して、HPVから身を守りましょう。
まとめ
今回は、低用量ピルとは直接的な関係はありませんが、最近話題の「HPVワクチン(子宮頸がんワクチン)」について、安全性や効果をご紹介しました。
過去に副反応の心配があったことから、接種が差し控えられていた時期もありました。ですが、日本や海外でのさまざまな調査を経て、安全に投与ができること、そして、子宮頸がんを予防する効果が高いことがわかっています。
接種を悩んでいる方は、厚生労働省などの出している情報も見ながら、ぜひ前向きに検討して見てください。
監修者
産婦人科専門医原野 尚美
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