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低用量ピルの副作用でうつ症状が出る?原因や対処法を解説
監修者:産婦人科医 原野尚美
最終更新日
低用量ピルを服用すると、頻度は高くありませんが副作用としてうつ症状があらわれる場合があります。「治療を始めてから気分の落ち込みがある」「食欲がわかない」などの症状が出ている場合は、副作用を疑ってみてもよいかもしれません。
今回は、低用量でうつ症状の副作用が出る原因や、うつ症状が出たときの対処法などについて詳しく解説します。
目次
- 1.うつ症状とは
- 2.低用量ピルの副作用でうつ症状が出る可能性がある
- 3.低用量ピルの副作用でうつ症状が出る原因
- 4.低用量ピルの服用でうつ症状が出たときの対処法
- 5.低用量ピル以外でも副作用でうつ症状が出る可能性がある
- 6.低用量ピルで見られるうつ症状以外の副作用
- 7.低用量ピルが生理前のうつ症状改善に有効なケースも
- 8.低用量ピルの副作用が気になるときは医師に相談しよう
- 9.まとめ
うつ症状とは
うつ症状とうつ病は厳密には異なります。うつ症状とは、憂鬱な気分になったり気分が落ち込んだりする抑うつ状態のことです。このうつ症状が長く続くものをうつ病といいます。うつ症状としては、次のものが代表的です。
- 気分の落ち込み
- 食欲不振
- 不眠
うつ症状が出ているだけなのか、うつ病なのかを自分で判断することは簡単ではありません。症状が気になる場合は、自己判断でうつ病だと思い込まずに専門医の判断を仰ぎましょう。
低用量ピルの副作用でうつ症状が出る可能性がある
低用量ピルの副作用でうつ症状が出ることが知られています。それぞれの低用量ピルのインタビューフォームを確認すると、うつ症状の発現頻度について次のように記載されていました。
低用量ピルの種類 | うつ症状の発現頻度 |
---|---|
シンフェーズ | 頻度不明 |
トリキュラー | 1%未満 |
ラベルフィーユ | 頻度不明 |
アンジュ | 頻度不明 |
マーベロン | 頻度不明 |
ファボワール | 頻度不明 |
ほとんどの低用量ピルは、副作用でうつ症状が起こる頻度は不明となっています。つまり、そこまで高い頻度で見られる副作用ではないのです。
低用量ピルの副作用でうつ症状が出る原因
実は、低用量ピルとうつ症状の因果関係については、まだはっきりとしたことが分かっていません。現在のところ、低用量ピルを服用することで体内の女性ホルモンのバランスが変化し、うつ症状を引き起こしているのではないかと考えられています。
低用量ピルに含まれているエストロゲン(卵胞ホルモン)は、感情のコントロールにも関与している女性ホルモンです。低用量ピルを服用するとエストロゲンの分泌量にも影響が出て、うつ症状が出る可能性があります。
なお日本産婦人科学会は、うつ病の女性が避妊用の低用量ピルを服用しても症状が悪化することはないとしています。ただし、副作用が原因で避妊用の低用量ピルの服用を中止した方のうち、5%は気分変調が理由だったというデータもあることから、一概に低用量ピルとうつ症状に関係がないとはいい切れません。
低用量ピルの服用でうつ症状が出たときの対処法
低用量ピルでうつ症状が出たからといって、服用を中止しなければいけないということはありません。うつ症状が出た場合は、医師と相談していくつか対処法を試してみましょう。
そのまま低用量ピルの服用を続ける
低用量ピルの服用を始めてまだあまり期間が経っていない場合は、そのまま服用を続けることでうつ症状が落ち着く場合があります。3シートほど服用を続けると、ホルモンバランスが整ってうつ症状などの副作用が落ち着いてくるでしょう。
自己判断で低用量ピルの服用を中止すると、ホルモンバランスが崩れてPMSがひどくなることもあるため、どうしてもうつ症状がつらいときは医師に相談するようにしてください。
低用量ピルを変更する
低用量ピルには多くの種類があります。種類によってプロゲステロン(黄体ホルモン)の含有割合や種類が異なるため、自分に合うものをまずは見つけてみてください。
自分の体に合う低用量ピルを服用することで、うつ症状が改善する可能性があります。低用量ピルの種類を変更したい場合は、医師に相談しましょう。
心療内科を受診する
低用量ピルを3シート続けて服用したり、種類を変えてみたりしてもうつ症状が改善しない場合は、心療内科を受診したほうが良いケースがあります。低用量ピルの服用とは関係なく、うつ症状が出ている可能性があるためです。
うつ症状によって生活に支障が出ている場合は、早めの受診を検討しましょう。
低用量ピル以外でも副作用でうつ症状が出る可能性がある
「薬剤惹起性うつ病」というものをご存知でしょうか。うつ病は日々の環境の中に発症の原因があることもありますが、薬の副作用でうつ病になることもあるのです。
薬剤惹起性うつ病が起こる頻度はあまり高くありませんが、低用量ピルでもうつ症状が出ることを知っておくと治療の役に立つことがあるでしょう。
薬剤惹起性うつ病の原因になる薬
薬剤惹起性うつ病の原因になるといわれている薬には、次のようなものがあります。
- インターフェロン製剤
- 副腎皮質ステロイド薬
- レセルピン
- β遮断薬
- カルシウム拮抗薬
- 抗ヒスタミン薬
- 経口避妊薬
これらの薬を服用し始めてから「眠れない」「不安感が強くなった」「食欲がない」などの症状が出た場合は、薬によってうつ病の症状が出ている可能性があります。しかし、勝手に薬の服用を止めてはいけません。医師に相談して対処法を決めましょう。
薬剤惹起性うつ病が疑われるときに行うべきこと
薬剤惹起性うつ病が疑われるときは、まず処方医に薬が原因でうつ病の症状が出ていることを相談してみてください。もし薬の服用を中止してうつ病の症状が改善すれば、原因が薬にあったといえます。
ただし、治療内容によっては薬の服用を中止できないこともあるため、自己判断で薬をやめることはないようにしてください。このような場合は、抗うつ薬などを使用して様子を見てみることもあります。
低用量ピルで見られるうつ症状以外の副作用
低用量ピルには、うつ症状以外にもいくつか副作用が知られています。ほとんどの副作用は、低用量ピルの服用を始めて1~3か月ほどで落ち着いてくるといわれているため、大きな心配は不要です。
不正出血
不正出血は、低用量ピルの服用を始めて1~3か月頃の時期に出やすいといわれています。出血する期間は人それぞれです。多くの場合は一時的に出血するだけであり、服用を続けることで次第に落ち着いてきます。
頭痛
低用量ピルで頭痛が起こるのは、ホルモンバランスが変化したりエストロゲンの分泌量が減少したりするためです。まれに、血栓症の症状として頭痛が見られることもあります。
吐き気
吐き気は低用量ピルでよく見られる副作用の一つです。低用量ピルを服用することで体内のホルモンバランスが一時的に変化し、気持ち悪くなることがあります。1~3か月ほどするとホルモンバランスが整って症状が落ち着いてくるといわれています。
むくみ
低用量ピルに含まれているプロゲステロンには、水分を溜め込む働きがあります。そのため、むくみに悩まされることもあるでしょう。
血栓症
低用量ピルの服用を始めて3か月から半年ほどは、血栓症のリスクが高まりやすいといわれています。血栓症のリスクが高い方は低用量ピルの服用が向かないこともあるため、必ず医師の診察を受けてから低用量ピルを服用するようにしましょう。
低用量ピルが生理前のうつ症状改善に有効なケースも
生理前になると気分が落ち込みやすくなる方もいるかと思います。低用量ピルは、生理前に起こるうつ症状の改善に有効だとされている薬です。PMS(月経前症候群)やPMDD(月経前不快気分障害)に対して、低用量ピルの服用が有効だといわれています。
低用量ピルの副作用が気になるときは医師に相談しよう
低用量ピルの服用を始めると、うつ症状など何か気になる副作用があらわれることがあります。うつ症状が見られる頻度は高くありませんが、気になるときは医師に相談しましょう。
このまま低用量ピルの服用を続けたほうがよいのか、それとも別の低用量ピルに変更したほうがよいのか適切な判断をしてもらえます。
まとめ
頻度としてはまれですが、低用量ピルの服用が原因でうつ症状が出ることがあります。気分の落ち込みが出たり食欲がなくなったりした場合は、低用量ピルの副作用が原因かもしれません。
しかし、一般的に低用量ピルの副作用は1~3か月ほど服用を続けることで改善されるといわれています。しばらく低用量ピルの服用を続けてもうつ症状が改善しなかったり、日常生活に支障が出てしまったりしているときは医師に相談するようにしてください。
監修者
産婦人科専門医原野 尚美
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