生理中のつらい貧血…原因と対策を解説

監修者:産婦人科医 原野 尚美

最終更新日

生理中のつらい貧血…原因と対策を解説

「生理のたびにフラフラする」「毎月のように貧血がひどくて、仕事や家事に集中できない」とお悩みの方は少なくありません。とくに出血量が多い方は、生理の影響で貧血になりやすく、毎月つらい思いを抱えていることでしょう。

生理は毎月くるものだからこそ、少しでも症状を和らげて心おだやかに過ごしたいですよね。

この記事では、生理中に貧血になりやすい理由や、今日からできる対策方法について詳しく、そしてやさしく解説します。「かくれ貧血」や「脳貧血」といった、間違いやすい症状についても紹介していますので、ご自身のからだと向き合う参考にしてみてくださいね。

貧血とはそもそもどのような状態?

女性と貧血

20代から40代の日本人女性のうち、約5人に1人は鉄欠乏性貧血だといわれています。多くの女性が同じように悩んでおり、貧血は決してあなただけの特別な問題ではありません。

【ヘモグロビンの値が低下した状態】

貧血とは、血液中の「ヘモグロビン」という成分の量が低下した状態のことを指します。世界保健機関(WHO)の基準では、成人女性の場合、ヘモグロビンが12g/dl以下になると貧血と定義されています

ヘモグロビンとは、鉄(ヘム)とたんぱく質(グロビン)が結びついた赤色素たんぱく質のことです。血液が赤く見えるのは、鉄が赤い色素をもっていることが関係しています。

ヘモグロビンは、呼吸で取り込んだ酸素を全身のすみずみまで運ぶ、とても大切な役割を担っています。しかし、貧血になるとヘモグロビンの量が減ってしまうため、からだ全体に十分な酸素がいきわたらず、息切れや疲労感などのつらい症状が出てしまうのです。

【こんな症状はありませんか?貧血のサイン】

貧血になると、からだにさまざまなサインがあらわれます。次のような症状に心当たりはありませんか?

・少し動いただけで動悸や息切れがする

・たっぷり寝ても疲労感やだるさが抜けない

・頭痛やめまいが頻繁に起こる

・爪が白っぽくなったり、スプーンのように反り返ったりする(匙状爪)

・顔色が悪い、唇の色が薄いと言われる

ただし、貧血になっているすべての方で上記のような症状がはっきりと見られるわけではありません。ヘモグロビンの値は急激に下がることは少なく、時間をかけて少しずつ低下していくことが多いため、からだが慣れてしまい自覚症状がないこともあります。「もしかして」と思ったら、無理をせずにからだのサインに耳を傾けてあげましょう。

【貧血の主な種類と原因】

貧血と聞くと、鉄分が不足する「鉄欠乏性貧血」を思い浮かべる方が多いと思います。実際に女性の貧血の多くはこれに該当しますが、実はほかにも種類があります。原因によって対処法も変わるため、確認しておきましょう。

・鉄欠乏性貧血:もっともよく見られる貧血です。食事からの鉄分不足や、生理による出血で発症します。

・悪性貧血:ビタミンB12や葉酸が不足することで発症します。名前に悪性とつきますが、ビタミンの補充で治療可能です。

・溶血性貧血:赤血球が通常よりも早く壊れてしまうために起こる貧血です。

・再生不良性貧血:血液をつくる骨髄の働きが低下し、白血球や赤血球、血小板が減少することで発症します。

症状が気になるときは、まずは内科、生理に関係していると感じる場合は婦人科を受診して、適切な検査を受けることが大切です。

目次

女性が貧血になりやすい理由

女性が貧血になりやすい訳

貧血は、男性よりも圧倒的に女性に多く見られる病気です。なぜ女性ばかりが貧血に悩まされやすいのでしょうか。それには、からだの仕組みが大きく関係しています。

【毎月の生理で鉄分が失われるから】

もっとも大きな理由は、毎月の生理(月経)です。生理がくると、経血と一緒にからだの中の鉄分も外へ排出されてしまいます。実際に、生理がある女性の6割以上が貧血傾向にあるともいわれています。

とくに、ナプキンを頻繁に替えなければならないほど経血量が多い(過多月経)方は、より多くの鉄分が失われやすいため注意が必要です。「いつものことだから」と我慢せず、からだを労わってあげてくださいね。

【婦人科系の病気が隠れている可能性】

経血量が多い場合、背後に婦人科系の病気が隠れていることがあります。代表的なものが「子宮筋腫」や「子宮腺筋症」です。

子宮筋腫は、子宮の筋肉にできる良性の腫瘍です。これが原因で子宮内膜の面積が広がり、経血量が増えたり、出血が長引いたりすることがあります。また、子宮腺筋症は、子宮内膜に似た組織が子宮の筋肉の中にできてしまう病気で、強い生理痛とともに過多月経を引き起こします。

もし「最近、生理の量が増えた気がする」「レバーのような血の塊がたくさん出る」といった変化があれば、一度婦人科で相談してみることをおすすめします。病気が原因の貧血は、根本的な治療が必要です。

【ダイエットや偏食による栄養不足】

忙しい毎日の中で、食事のバランスが崩れていませんか?過度なダイエットや偏った食事によって、鉄分だけでなく、血をつくるために必要なビタミンやたんぱく質が不足することも、貧血の大きな原因となります。また、妊娠中や授乳中の女性は、母乳を通して赤ちゃんに鉄分を分け与えるため、さらに鉄分が不足しやすい状態になります。

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注意したい「かくれ貧血」と「脳貧血」の違い

かくれ貧血と脳貧血

貧血の検査を受けたものの、「異常なし」と言われたことはありませんか?それでも症状がある場合、別の要因が隠れているかもしれません。

【貯蔵鉄が空っぽ?かくれ貧血】

通常の血液検査では、ヘモグロビンの値を調べます。しかし、ヘモグロビンの値が正常でも、体内にストックされている「フェリチン(貯蔵鉄)」が不足している状態を「かくれ貧血(潜在性鉄欠乏)」と呼びます

財布のお金(ヘモグロビン)はあるけれど、銀行の貯金(フェリチン)が底をつきかけているような状態です。この段階でも、ひどい疲労感や気分の落ち込み、抜け毛などの不調があらわれることがあります。将来的に本格的な貧血に進む恐れがあるため、フェリチンの値まで調べてもらうと安心です。

【立ちくらみは「脳貧血」かも】

朝礼で長時間立っていたり、急に立ち上がったりしたときに、目の前が真っ暗になってくらくらする症状。これは鉄分不足による貧血ではなく、血圧が一時的に下がって脳に十分な血液がいかなくなる「脳貧血(起立性低血圧など)」と呼ばれる状態です。

脳貧血は自律神経の乱れやストレス、睡眠不足などが原因で起こりやすくなります。脳貧血が起きたときは、無理をせず安全な場所で横になり、安静にすることで徐々に回復します。

なお、慢性的な睡眠不足や不眠でお悩みの場合は、男女問わずご相談いただけるマイピルの睡眠サポートサービス( https://mypill.online/sleep/ )もございます。十分な休息をとり、からだの調子を整えるための選択肢としてぜひご活用ください。

生理によるつらい貧血の対策と治療法

生理の貧血対策と治療法

生理のたびに襲ってくる貧血のつらさを少しでも和らげるために、日常でできる対策と、医療機関で受けられる治療についてご紹介します。

【鉄分とビタミンを意識した食事をとる】

からだの基本は毎日の食事からです。鉄分が多く含まれる食材を積極的に取り入れましょう。鉄分には、お肉やお魚に含まれる吸収率の高い「ヘム鉄」と、野菜や海藻に含まれる「非ヘム鉄」があります。

・豚レバー(ヘム鉄):13.0mg(100gあたり)

・あさり水煮(非ヘム鉄):30.0mg(100gあたり)

・小松菜(非ヘム鉄):2.8mg(100gあたり)

・ひじき(非ヘム鉄):6.2mg(ゆで100gあたり)

非ヘム鉄を摂る際は、ビタミンC(柑橘類やパプリカなど)と一緒に食べることで吸収率がアップします。

コンビニでも買える!貧血対策におすすめの食べ物

忙しくて自炊が難しいときは、コンビニを上手に活用してくださいね。例えば、お惣菜の「レバニラ炒め」や「あさりのお味噌汁」「ほうれん草の胡麻和え」などがおすすめです。また、間食には「鉄分強化のヨーグルト」や「アーモンドなどのナッツ類」を選ぶと、手軽に鉄分を補給することができます。

【サプリメントで賢く補う】

食事だけで必要な鉄分を毎日補うのは大変です。そんなときは、サプリメントの力を借りるのも賢い選択です。とくに、吸収の良い「ヘム鉄」が配合されているものを選ぶとよいでしょう。ただし、過剰摂取は胃腸への負担になるため、用法用量をしっかり守って活用してください。

【婦人科を受診し鉄剤を処方してもらう】

食事やサプリメントで改善しないほどつらい場合は、早めに婦人科や内科を受診しましょう。血液検査で貧血と診断された場合、症状に合わせて「鉄剤」が処方されることがあります。

鉄剤を飲むと、胃のむかつきや吐き気といった副作用が出ることがあります。もし気持ち悪くなってしまったら、我慢せずに医師に相談してください。お薬の種類を変えたり、飲み薬ではなく注射や点滴で鉄分を補給したりと、あなたに合った方法を提案してもらえます。

【低用量ピルで経血量をコントロールする】

生理の量が多くて貧血を繰り返してしまう方には、「低用量ピル」の服用も効果的な治療の選択肢となります。低用量ピルは避妊のためだけのお薬ではありません。女性ホルモンのバランスを整え、子宮内膜が厚くなるのを抑える働きがあるため、結果として経血量が減り、生理痛の緩和や貧血の改善が期待できます。

「病院に行く時間がなかなかとれない」「対面での診察は緊張する」という方には、オンライン診療サービスも便利です。一人ひとりの症状に合わせてお薬の処方を検討いたします(※医師の診察結果により、安全を考慮して処方できない場合もございます)。無理なく治療を続けるための一つの選択肢として、ぜひ検討してみてください。

よくある質問(FAQ)

Q. 生理中の貧血で倒れそうなとき、即効性のある対処法はありますか?

まずは安全な場所に座るか横になり、衣服をゆるめてからだを休めてください。貧血の症状が出ているときは、からだへの酸素が不足しています。横になって足を少し高くすると、血液が脳に戻りやすくなります。また、深呼吸をしてからだをリラックスさせることも大切です。症状が落ち着くまでは無理に動かないようにしましょう。

Q. 病院に行くべき経血量の目安はどのくらいですか?

「昼間でも夜用の大きなナプキンが必要」「ナプキンが1時間もたない」「レバーのようなドロッとした大きな血の塊がたくさん出る」といった場合は、経血量が多すぎる(過多月経)サインです。我慢せず、なるべく早めに婦人科を受診して医師に相談してください。

まとめ

生理の時期に起こる貧血は、経血と一緒に大切な鉄分が失われてしまうことが大きな原因です。多くの女性が経験する不調ですが、「みんな我慢しているから」とやり過ごす必要はありません。

動悸や息切れ、抜けない疲労感など、からだからのSOSを感じたら、まずは食事を見直し、必要に応じて医療機関を頼りましょう。婦人科の病気が隠れていることもありますし、低用量ピルなどで経血量をコントロールすることで、毎月のつらさが劇的に軽くなることもあります。

ご自身のからだを一番大切にできるのはあなた自身です。不安なことやつらい症状があれば、一人で抱え込まずに医師に相談して、心もからだも健やかに過ごせる方法を見つけていきましょう。

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参考文献

  1. 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
  2. 厚生労働省 e-ヘルスネット「貧血の予防には、まずは普段の食生活を見直そう」
  3. 日本産科婦人科学会「月経異常」
  4. 日本産科婦人科学会 「低用量経口避妊薬、低用量エストロゲン・プロゲストーゲン配合剤ガイドライン(案)」

産婦人科専門医 原野尚美

監修者
産婦人科専門医原野 尚美

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