私の生理痛は大丈夫?生理痛の重さレベルをチェックしよう
避妊に失敗した、コンドームが破れてしまったなど、予期せぬトラブルで妊娠の不安を抱えているときは、一刻も早く安心できる方法を知りたいと思われるでしょう。そんな緊急時に、最後の砦として妊娠を防ぐ手段が「アフターピル(緊急避妊薬)」です。
「飲めば本当に妊娠しないの?」「どうやって妊娠を止めるの?」といった疑問や不安を持つ方のために、今回はアフターピルが妊娠を阻止するメカニズムや、種類ごとの効果、そして服用後の体への影響について、医師監修のもと詳しく解説します。
アフターピルで妊娠を阻止できる理由(メカニズム)

アフターピルは、服用することで体内のホルモンバランスを一時的に変化させ、「妊娠が成立するプロセス」を邪魔する薬です。決して「堕胎」薬ではなく、あくまで「妊娠成立(着床)を防ぐ」ためのものです。
なぜ薬を飲むだけで妊娠を防げるのか、その主な3つの働きについて解説します。
排卵を抑制・遅らせる作用
妊娠は、卵巣から卵子が飛び出す「排卵」があり、その卵子が精子と出会って受精することから始まります。
アフターピルを服用すると、脳が「すでに十分なホルモンがある」と勘違いをし、排卵を促す指令(LHサージ)を止めたり、遅らせたりします。
精子の寿命は女性の体内で約3〜5日ですが、アフターピルによって排卵を5〜7日ほど遅らせることができれば、その間に精子の寿命が尽き、受精を防ぐことができます。これが最も主要な避妊メカニズムです。
子宮内膜の増殖を抑える(着床阻害)
もしすでに排卵が起こってしまった後でも、アフターピルには効果が期待できます。 受精卵ができたとしても、それが子宮の内側にくっつく「着床」ができなければ妊娠は成立しません。着床するためには、子宮内膜という「ふかふかのベッド」が必要です。
アフターピルに含まれる黄体ホルモンの作用により、この子宮内膜の成熟を妨げ、受精卵が着床しにくい環境を作ります。ベッドを未完成の状態にすることで、妊娠の成立をブロックするのです。
精子の侵入を阻む
さらに、子宮の入り口にある粘液(子宮頸管粘液)の性質を変化させる作用もあります。粘液をドロドロにして精子が子宮内部へ泳いでいくのを難しくし、卵子との出会い自体を防ぐ効果も期待されています。
生理と妊娠の仕組み

生理は、エストロゲンとプロゲステロンという、2つの女性ホルモンによって作られています。女性ホルモンの分泌量は、いつも一定というわけではなく、分泌量をコントロールし合いながら、規則正しい波のようになっています。
生理周期は、2つの女性ホルモンの波によって作られています。 生理後、ホルモンの働きで子宮内膜(赤ちゃんのベッド)が厚くなり、「LHサージ」という急激な分泌ピークが起こると排卵します。その後、ふかふかに維持された子宮内膜に受精卵が着床することで、妊娠が成立します。
アフターピルの種類と服用方法
日本で主に使用されているアフターピルには、いくつかの種類があります。それぞれ服用回数や有効時間が異なるため、ご自身の状況に合わせて選ぶことが大切です。
| プラノバール | レボノルゲストレル | エラ | |
|---|---|---|---|
| 服用方法 | 1回2錠、12時間おきに2回 | 1回(1錠) | 1回(1錠) |
| 服用のタイミング | 72時間以内 | 72時間以内 | 120時間以内 |
| 副作用頻度 | やや多め | プラノバールよりは少なめ | プラノバールよりは少なめ |
| 費用 | 最も安価 | プラノバールよりは高価な傾向 | レボノルゲストレルと同等か、やや高価 |
①プラノバール
ホルモン配合剤(卵胞ホルモン+黄体ホルモン)である「プラノバール」を使う方法で、「ヤッペ法」と呼ばれます。
性交後、72時間以内に1回(2錠)、1回目の12時間後に1回(2錠)の、合計2回服用します。プラノバールは、通常は中用量ピルとして使われる薬で、以前は最もよく使われる緊急避妊方法でした。性行為から服用までの時間が早ければ早いほど、妊娠を阻止できる可能性が高くなります。
吐き気の副作用頻度がやや高いのが難点です。もし、服用から2時間以内に吐いてしまった場合は、再度2錠(1回分)を服用し直さなければならないので、処方元の医療機関へ相談しましょう。
②レボノルゲストレル
黄体ホルモンのみが含まれた「レボノルゲストレル」という薬を、性交後72時間以内に1回(1錠)だけ服用します。プラノバールを用いたヤッペ法に比べて吐き気の副作用が少なく、また、妊娠阻止の効果も高めです。
近年よく用いられる薬ですが、肥満の方、一部の薬を服用している方はレボノルゲストレルの効果が弱まる可能性があるため、別の方法が適していることもあります。
もし、服用から2時間以内に吐いてしまった場合は、再度1錠(1回分)を服用し直さなければならないので、処方元の医療機関へ相談しましょう。
③エラ
厚生労働省からの承認を得ていない薬ですが、世界中で広く用いられており、日本でも準備しているクリニックが増えています。体内で、黄体ホルモンと似たような働き方をする薬です。
性行為から120時間以内であれば服用できるため、「土日を挟んで時間が経ってしまった」というような場合にも服用できるのが特徴です。
もし、服用から3時間以内に吐いてしまった場合は、再度1錠(1回分)を服用し直さなければならないので、処方元の医療機関へ相談しましょう。
アフターピルの妊娠阻止率

「妊娠阻止率」は、排卵日付近の妊娠しやすい時期の性交渉のあとにアフターピルを服用して、妊娠しないようにできる確率のことです。
薬の種類、性交から服用までにかかった時間によって、得られる効果が変わります。避妊に失敗してしまった場合、できるだけ早く受診するようにしましょう。
性交渉からの時間があまり経過していない場合は、プラノバールのヤッペ法以外は同等の効果が得られると考えられます。ですが、48時間以上経過しているような場合には、エラが最も優れているといえるでしょう。
医療機関へ相談する際には、性交渉をいつおこなったのかが重要な情報となりますので、偽りなく伝えるようにしてください。
アフターピルは、複数回使っても女性の体に悪影響はないことがわかっています。万が一のときには頼れるよい薬ですが、表を見てもわかる通り、必ず妊娠を阻止できるわけではありません。日頃から低用量ピルを服用して避妊をおこなった場合と比べると、妊娠阻止率は低いです。
「アフターピルを飲めばいいから、避妊をしなくても大丈夫」とは考えずに、コンドームや低用量ピルを用いた避妊はおこなうようにしましょう。
低用量ピルとはどう違う?
低用量ピルも、アフターピルと同様に、LHサージを起こさないように働きかけ、排卵を抑える作用があります。アフターピルとの違いは、含まれる女性ホルモンの種類や量です。
低用量ピルは、毎日少量の女性ホルモンを補充し続けることで、計画的に排卵・子宮内膜の増殖を抑えます。きちんと服用できていれば、99%という高い避妊効果が得られます。
一方で、アフターピルは、日常的に低用量ピルを使用していない方が「緊急事態のときに」服用し、妊娠を阻止するための薬です。すぐにしっかりとした効果を得なければならないため、含まれているホルモン量が低用量ピルと比較すると多くなっています。(※プラノバール、レボノルゲストレルの場合)
低用量ピルは、毎日決まった時間に服用を続けることで、避妊効果だけでなく、生理痛やPMS(生理に伴うイライラや体調不良)の緩和、生理周期を安定させるなどさまざまな効果が得られます。アフターピルは一時的な服用なので、このような効用は得られません。
次の生理が起これば避妊成功のサイン

アフターピルを服用したあと、避妊が成功したかどうかは、次の生理が起こるかどうかで簡易的に判断できます。生理の予定日を確認し、出血の量や状態をよく観察しましょう。
とある報告によれば、生理予定日の付近で生理が起こるかたが約32%、前後に4〜7日ほどズレる方が約26%、前後に7日以上ズレる方が約42%です。生理が早まるか遅くなるかは、排卵が起きていたかどうかによって変わります。
また、生理の前、アフターピル服用から数日〜7日目のあたりで少量の消退出血が起こることも多いです。この消退出血は、2〜3日程度で終わり、生理痛もあまり重くならない傾向にあります。
アフターピルに関するよくある質問
Q.お酒を飲んでも平気ですか?
アルコールが薬の効果を直接弱めることはありませんが、お酒の作用で吐き気が増し、薬を吐いてしまうリスクが高まります。 確実な効果を得るためにも、服用当日の飲酒は控えるか、少なくとも服用後2〜3時間は様子を見ることをおすすめします。
Q.授乳中に飲んでも赤ちゃんに影響しませんか?
アフターピルの成分は母乳に移行しますが、赤ちゃんに悪影響を与える可能性は低いとされています。 念のため、服用後24時間は授乳を控えてミルクに切り替えることを推奨している医師もいます。処方の際に授乳中であることを伝え、医師の指示に従ってください。
Q.将来の妊娠に悪影響はありませんか?
アフターピルは一時的に排卵を抑えるだけであり、将来の妊娠能力(不妊)に影響を与えることはありません。 薬の成分も数日で体から排出されますので、安心してください。
Q.保険証なしで買えますか?
アフターピルは自由診療(保険適用外)のため、保険証がなくても処方してもらえます。 ただし、本人確認のために身分証の提示を求められることが一般的です。オンライン診療の場合も同様です。誰かに知られることなく、プライバシーを守って入手することが可能です。
まとめ
今回は、「避妊がうまくできなかった」など、緊急事態の際に頼りになるアフターピルについて、種類別の効果、メカニズムなどを解説しました。
アフターピルの効果は100%ではありませんが、正しく服用できれば比較的高い確率で妊娠を阻止することができます。アフターピルは、排卵を抑制したり、子宮内膜を薄くしたりすることで妊娠を阻止する薬です。
- 72時間(種類によっては120時間)以内の服用が必要
- 早ければ早いほど妊娠阻止率は高まる
- 入手方法はクリニック、オンライン診療などがある
不安な気持ちで過ごすよりも、まずは専門家に相談し、適切な処置を受けることが大切です。決して自分を責めず、早めに行動に移しましょう。あなたの心と体が守られることを願っています。万が一のときには、お近くの婦人科・オンライン診療・アフターピルの対応薬局などでご相談ください。
参考文献
- 緊急避妊法の適正使用に関する指針(平成 28 年度改訂版) https://www.jsog.or.jp/activity/pdf/kinkyuhinin_shishin_H28.pdf
- 厚生労働省「オンライン診療の適切な実施に関する指針」に基づく緊急避妊に係る取組について https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000186912_00002.html
- Emergency contraception (Key facts) - WHO
https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/emergency-contraception - 緊急避妊薬のスイッチOTC化について(審査等)- 厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/001552335.pdf
- Contraception - NICE
https://www.nice.org.uk/guidance/qs129/chapter/quality-statement-2-emergency-contraception







