アフターピルで妊娠を阻止できるのはなぜ?効果やメカニズムを解説

監修者:産婦人科医 原野尚美 


最終更新日

アフターピルで妊娠を阻止できるのはなぜ?効果やメカニズムを解説

避妊に失敗したなど、希望をしていないにも関わらず妊娠の不安がある性行為をしてしまったとき、緊急対応として妊娠を防ぐための手段がアフターピルです。

今までは、医師の診察を受けなければ手に入れることができず、夜間や休日に困ることがありましたが、最近ではオンライン診療や調剤薬局でも対応してもらえるようになってきました。

今回は、緊急時のための「アフターピル」について、効果の程度やメカニズムについてご紹介します。

目次

  • 1.アフターピルの服用方法と効果
  • 2.アフターピルのメカニズム
  • 3.次の生理が起これば避妊成功のサイン
  • 4.まとめ

アフターピルの服用方法と効果

アフターピルは、妊娠を100%防ぐことができる魔法の薬ではありません。ご自身の体を守るためにも、効果について過信せず、正しく知っておきましょう。

アフターピルとは?どんな時に使うもの?

アフターピルは、避妊に失敗した・避妊ができなかった性行為のあとに、望まない妊娠を防ぐために服用する「緊急避妊薬」です。

医療機関で処方をしてもらうにあたり、避妊ができなかった理由などを問い詰められることはありません。ご自身が必要だと思うとき、望まないタイミングで妊娠してしまうかもしれないと不安なときに、対応している婦人科や調剤薬局でご相談ください。

年齢制限もありませんので、生理のはじまっている女性であれば、心配なときに服用できます。

アフターピルの種類と服用方法

アフターピルとして使用されている薬は3種類あり、それぞれ服用方法が異なります。避妊薬として重要な成分は、2つの女性ホルモンのうち「黄体ホルモン」です。

①プラノバール

ホルモン配合剤(卵胞ホルモン+黄体ホルモン)である「プラノバール」を使う方法で、「ヤッペ法」と呼ばれます。
無防備な性交後、72時間以内に1回(2錠)、1回目の12時間後に1回(2錠)の、合計2回服用します。プラノバールは、通常は中用量ピルとして使われる薬で、以前は最もよく使われる緊急避妊方法でした。性行為から服用までの時間が早ければ早いほど、妊娠を阻止できる可能性が高くなります。

吐き気の副作用頻度がやや高いのが難点です。もし、服用から2時間以内に吐いてしまった場合は、再度2錠(1回分)を服用し直さなければならないので、処方元の医療機関へ相談しましょう。

②レボノルゲストレル

黄体ホルモンのみが含まれた「レボノルゲストレル」という薬を、無防備な性交後72時間以内に1回(1錠)だけ服用します。プラノバールを用いたヤッペ法に比べて吐き気の副作用が少なく、また、妊娠阻止の効果も高めです。
近年よく用いられる薬ですが、肥満の方、一部の薬を服用している方はレボノルゲストレルの効果が弱まる可能性があるため、別の方法が適していることもあります。

もし、服用から2時間以内に吐いてしまった場合は、再度1錠(1回分)を服用し直さなければならないので、処方元の医療機関へ相談しましょう。

③エラ

厚生労働省からの承認を得ていない薬ですが、世界中で広く用いられており、日本でも準備しているクリニックが増えています。体内で、黄体ホルモンと似たような働き方をする薬です。
無防備な性交から120時間以内であれば服用できるため、「土日を挟んで時間が経ってしまった」というような場合にも服用できるのが特徴です。肥満(BMI>30)の方も、効果を弱めることなく服用できます。

もし、服用から3時間以内に吐いてしまった場合は、再度1錠(1回分)を服用し直さなければならないので、処方元の医療機関へ相談しましょう。

プラノバール レボノルゲストレル エラ
服用方法 1回2錠、12時間おきに2回 1回(1錠) 1回(1錠)
服用のタイミング 72時間以内 72時間以内 120時間以内
副作用頻度 やや多め プラノバールよりは少なめ プラノバールよりは少なめ
費用 最も安価 プラノバールよりは高価な傾向 レボノルゲストレルと同等か、やや高価

アフターピルの妊娠阻止率

「妊娠阻止率」は、排卵日付近の妊娠しやすい時期の性交渉のあとにアフターピルを服用して、妊娠しないようにできる確率のことです。
薬の種類、性交から服用までにかかった時間によって、得られる効果が変わります。避妊に失敗してしまった場合、できるだけ早く受診するようにしましょう。

服用する時間と妊娠回避率

性交渉からの時間があまり経過していない場合は、プラノバールのヤッペ法以外は同等の効果が得られると考えられます。ですが、48時間以上経過しているような場合には、エラが最も優れているといえるでしょう。

医療機関へ相談する際には、性交渉をいつおこなったのかが重要な情報となりますので、偽りなく伝えるようにしてください。

アフターピルは、複数回使っても女性の体に悪影響はないことがわかっています。万が一のときには頼れるよい薬ですが、表を見てもわかる通り、必ず妊娠を阻止できるわけではありません。日頃から低用量ピルを服用して避妊をおこなった場合と比べると、妊娠阻止率は低いです。
「アフターピルを飲めばいいから、避妊をしなくても大丈夫」とは考えずに、コンドームや低用量ピルを用いた避妊はおこなうようにしましょう。

アフターピルのメカニズム

アフターピルで妊娠を防ぐことができるメカニズムをご紹介します。

生理と妊娠の仕組み

生理は、エストロゲンとプロゲステロンという、2つの女性ホルモンによって作られています。女性ホルモンの分泌量は、いつも一定というわけではなく、分泌量をコントロールし合いながら、規則正しい波のようになっています。

女性の一周期内のホルモン分泌量

生理の期間は、どちらのホルモンの分泌量も少ない状態です。生理が終わってから排卵期までの「卵胞期」には、まず卵胞ホルモン(エストロゲン)の分泌量が増えていきます。卵胞ホルモン(エストロゲン)には子宮内膜を厚く成長させる働きがあるため、卵胞期は子宮内膜も厚くなっていく時期です。

続いて、「黄体形成ホルモン」という、排卵を起こしたり、黄体ホルモンの分泌を起こしたりするホルモンの分泌量がぐっと高まります。この黄体形成ホルモン分泌量のピークのことを「LHサージ」と呼び、LHサージの36時間後に排卵がおこるメカニズムです。

排卵の前後で性行為があれば、妊娠する可能性があります。そして、排卵のあと、徐々に卵胞ホルモン(エストロゲン)の分泌量は減り、黄体ホルモン(プロゲステロン)の分泌量が増えはじめます。黄体ホルモン(プロゲステロン)の分泌量が多い期間は「黄体期」とも呼ばれ、基礎体温が上がり、子宮内膜が厚く維持される生理直前の時期です。
子宮内膜は、「受精卵が着床するためのベッド」と表現されることもあるように、着床して妊娠が成立するためには、ある程度の厚みがなければなりません。
受精卵が子宮内膜に着床すると、妊娠が成立します。

アフターピルの妊娠阻止メカニズム

一連の生理周期の中で妊娠を防ぐには、大きく2つのタイミングがあります。

  1. 排卵を抑える・遅らせる
  2. 子宮内膜への着床を抑える
アフターピルの仕組み・効果

排卵よりも前の時期にアフターピルを服用すると、LHサージが生じる前に体内の黄体ホルモン量を増やすことができます。体にとっては、LHサージを起こす前に黄体期へ移行したような状態です。すると、LHサージを起こす必要はないと判断されるため、続いて起こるはずの排卵も抑制され、避妊につながるという仕組みです。すでに排卵間近だった場合でも、5〜7日間程度、排卵を遅らせることができます。
精子の寿命は約5日間です。排卵を5日間遅らせれば、その後排卵が起きたとしても、生きている精子と出会う可能性は低くなり、妊娠を阻止することができます。

すでに排卵が起きたあとだった場合は、受精卵が着床して妊娠が成立しないように阻まなければなりません。受精卵は、ゆっくりと卵管内を移動して、子宮まで到達するのに約6日間かかります。本来、子宮では、排卵から6日目ごろに子宮内膜が着床にちょうどよい厚みになるように維持しています。
ところが、アフターピルを服用すると、黄体ホルモンの作用によって子宮内膜を厚く維持することができなくなり、受精卵が着床しにくい環境に変わります。
子宮内膜の状態を変えることで、着床を抑えて妊娠を阻止しているのです。

そのほかにも、子宮頸管粘液の状態を変化させて精子を侵入しにくくするなどの作用もあると考えられています。

低用量ピルとはどう違う?

低用量ピルも、アフターピルと同様に、LHサージを起こさないように働きかけ、排卵を抑える作用があります。アフターピルとの違いは、含まれる女性ホルモンの種類や量です。

低用量ピルは、毎日少量の女性ホルモンを補充し続けることで、計画的に排卵・子宮内膜の増殖を抑えます。きちんと服用できていれば、99%という高い避妊効果が得られます。
一方で、アフターピルは、日常的に低用量ピルを使用していない方が「緊急事態のときに」服用し、妊娠を阻止するための薬です。すぐにしっかりとした効果を得なければならないため、含まれているホルモン量が低用量ピルと比較すると多くなっています。(※プラノバール、レボノルゲストレルの場合)

低用量ピルは、毎日決まった時間に服用を続けることで、避妊効果だけでなく、生理痛やPMS(生理に伴うイライラや体調不良)の緩和、生理周期を安定させるなどさまざまな効果が得られます。アフターピルは一時的な服用なので、このような効用は得られません。

次の生理が起これば避妊成功のサイン

アフターピルを服用したあと、避妊が成功したかどうかは、次の生理が起こるかどうかで簡易的に判断できます。生理の予定日を確認し、出血の量や状態をよく観察しましょう。

とある報告によれば、生理予定日の付近で生理が起こるかたが約32%、前後に4〜7日ほどズレる方が約26%、前後に7日以上ズレる方が約42%です。生理が早まるか遅くなるかは、排卵が起きていたかどうかによって変わります。

また、生理の前、アフターピル服用から数日〜7日目のあたりで少量の消退出血が起こることも多いです。この消退出血は、2〜3日程度で終わり、生理痛もあまり重くならない傾向にあります。

消退出血があった場合は、その次の生理はいつもより出血量が少なくなるかもしれません。

ピル服用から生理までの流れ

以下のような場合には、妊娠が阻止できなかった可能性があるため、検査することをおすすめします。市販の妊娠検査薬を使用するか、婦人科を受診して妊娠の検査をおこないましょう。

  • 次の生理の予定日から1週間以上経過しても生理がこない
  • アフターピルを服用して3週間以上経過しても生理がこない
  • ごくわずかな出血しかなかった

まとめ

今回は、「避妊がうまくできなかった」など、緊急事態の際に頼りになるアフターピルについて、種類別の効果、メカニズムなどを解説しました。
アフターピルの効果は100%ではありませんが、正しく服用できれば比較的高い確率で妊娠を阻止することができます。アフターピルは、排卵を抑制したり、子宮内膜を薄くしたりすることで妊娠を阻止する薬です。
妊娠の不安がある性行為のあと、できるだけ早く服用しましょう。早ければ早いほど、高い効果が得られます。万が一のときには、お近くの婦人科・オンライン診療・アフターピルの対応薬局などでご相談ください。

監修者
産婦人科専門医原野 尚美

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